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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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池田理代子といえば、『ベルサイユのばら』が有名ですが、

この『オルフェウスの窓』は、それにまさるとも劣らない名作、

スケールを考えると、それ以上の大作です。

ドイツの音楽学校から始まり、舞台はウィーン、ロシア、そしてまたドイツと、めまぐるしく動きます。

背景には日露戦争、ロシア革命と血なまぐさい歴史の転換点を置きながら、

あくまで激しくも純粋な恋愛を軸に描かれた大河ドラマです。

 

『ベルばら』ブームなるものが存在したことはもちろん知っていますが、

それは生まれる前の話。

なのにコンビニで見つけた『ベルばら』により、

私にも遅ればせながらブームがやってきました。

ぱっちりキラキラ瞳と、ひらひらフリフリなドレス。

今時ありえない、昔ながらの少女マンガの絵柄も、

その華麗かつ壮大なる物語の前では気になりません。

30年の時を経てもまったく色あせない作品です。

これを20代で描ききった作者の力量には脱帽です。

 

池田ワールドにはまった私が次に求めたのが、『オルフェウスの窓』。

本屋を数軒まわり、3日で全巻そろえました。

しかしすぐには読めません。

・・・難しいから。

 

ロシア革命などの歴史的背景、至高なる音楽の世界、多彩な登場人物。

私の理解を超える世界に、最初はなかなかシンクロできませんでした。

しかしいったん入り込むと、あとはまっさかさま。

ユリウス、クラウス、イザークetc、頭の中にはつねに登場人物が現れ、

あらゆるシーンもばちばちくり返され、完全に病みました。

『オルフェウス』の愛は、『ベルばら』よりももっと切なく、胸をひしぎます。

ラストには「どうしてハッピーエンドにしてくれなかったんだ!」と、

今さらながら作者を恨んだもの。

当時の読者もきっと同じだったに違いない。

 

『ベルばら』を読んだ時は、「よし、フランスに行こう!」と思ったものですが、

やはり『オルフェウス』でも、

ユリウスが、

「時よ、わけてもこの街の上だけはわけてもゆっくりと祝福をこめて通り過ぎるがいい」

とつぶやいた、かのレーゲンスブルクに、行きたくなりました。

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