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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『大日本人』

松本人志初監督・カンヌ映画祭出品・内容からキャストに至るまですべて謎という、

すべてにおいて大物ぶりを発揮した作品です。

松本人志フリークのツレが何ヶ月も前から「公開日に行く」と宣言していましたが、

私自身はなんの興味もなかったのに、

キャプテンストライダムのライブと引き換えに、観に行く羽目になってしまいました。

 

松本人志という芸人、いろいろな評価はありますが、

個人的には、お笑いの才能にはすばらしく恵まれている人だと思います。それは認めます。

でも好きではありません。

だからこの映画も、キャプストがなければ絶対に観ることはなかったでしょう。

さて公開日初日、「売り切れていたらどうしよう」と危惧するツレ、

「絶対にありえない」と主張する私。

結果はがら空きでした。松ちゃんが見たら泣くかもしれないくらいの閑散ぶり。

まあ、東京では満員だったらしいので、地域性でしょう。

 

さて内容。

大佐藤大(だいさとうまさる)という《大日本人》にテレビ局が密着する、

ドキュメンタリー形式で、淡々と始まります。

《大日本人》とは、体に電流を流して巨大化し、

《獣》と呼ばれる怪獣みたいなバケモノと戦う人のことですが、

ウルトラマンのようにヒーローと崇め奉られていたのは、遥か過去の話。

大佐藤は、騒音公害だの電気の無駄遣いだのと市民から忌み嫌われ、

妻と娘にも逃げられ、

戦闘の模様を映すテレビ放送は、低視聴率につき深夜枠へ追いやられる始末。

いかにも現代社会らしい、冴えないヒーローの悲哀は、

巨大化した時の体に直接掲示されるスポンサー広告にも、そこはかとなく表れています。

戦闘ごとに違っていて、いかにもお笑い芸人らしいツボをついてきます。

現代技術を駆使したCGも、お金がかかっているだけあって、

他の邦画では観られないくらいすごいですが、

日本というキーワードに象徴されるように、

松ちゃんのこだわりなのか、あちこちにレトロな映像が見られます。

この広告たちも、いかにも《ジャポニズム》。

しかし、戦闘が始まっても、淡々とした流れは変わりません。

1時間くらいで眠気に襲われ、

1時間半くらいで「まさかこのまま淡々と終わるんじゃなかろうな・・・」と疑念がよぎったところで、

突然話が進展します。

進展といってよいのかわかりませんが、とにかく怒濤の展開で、

それまでぐだぐだしていた館内の雰囲気が一変しました。

エンドクレジットが始まっても誰も席を立たず、

結局明かりがつくまで、誰ひとりとして微動だにしませんでした。

 

要するに、あのドキュメンタリーは、ラスト15分の序章だったのです。

壮大な前フリにすぎなかったのです。

 

この映画を批判することは簡単です。

松ちゃんの演技はダメダメだし、カメラワークも見え透いているし、

不愉快で下品な演出だらけで、キャストも身内が多いし、

映画としての評価は、えんえんと書き続けられるだろうけど、

あくまでこれを映画として位置づけるならの話。

これは映画ではない、と私は思う。

あの打ち切りになった『ごっつええ感じ』の2時間バージョンだ。

松本人志は『ごっつ』に未練があって、

いつかドカンとやりたかったのでしょうか。

 

ちなみに、私、『ごっつ』大嫌いだったんですよね~。

評価:★★☆☆☆

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