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この映画が作られたのは2005年、その当時には東京の大規模停電など起こりうるべくもなく、あくまでファンタジーとして創作された物語だったのでしょう。
街が真っ暗になったクリスマスイブの夜。さまざまな思いを抱える12人の老若交えた男女。星とキャンドルのわずかな灯りに照らされてありのままになったほんとうの気持ち。それぞれは、幻想的な一夜を過ごし、新しい夜明けを迎える。
人工的な光を排除した映像がとてもきれいです。とくに、キャンドルをたくさん灯した路地裏のバー。その日はじめて会ったゆきずりの人たちとお酒を酌み交わし、心のうちを饒舌に語りたくなります。
12人のキャラクターがそれぞれ生き生きしていて、テンポ良くそれぞれのパートに場面転換するので飽きません。
画面が暗いぶん女優さんたちの美しさも半減してしまっていますが、エレベーター内で泣きじゃくる井川遥とおろおろする阿部力のツーショットは序盤を引っ張る見ごたえがありました。田畑智子も片想いのもどかしさがかわいらしかったです。原田知世は、どうしてこんな綺麗な奥さんがいるのに浮気してしまうのかなというところ。田口トモロヲの役柄が不倫と私生児というふたつの役割を負っていてキャラがぼんやりしていたせいか、余計にそう感じてしまいました。
吉川晃司と寺島しのぶは、そこだけ別ドラマで観たいような重量感がありました。宇津井健も妻の秘密を聞く前と聞いたあとのアンバランスさが光っていました。淡島千景の大女優らしい間の取り方もさすがです。
大停電という偶然が、人と人とを結びつけていきますが、そんな中、乳がんの手術を明日に控えたモデルと天体観測が趣味の中学生との冒険は、そこだけが独立していて、いつ交わるのかと思っていたらそのままでした。
やはりこの映画の核を占めていたのはトヨエツのパート。田畑智子とのぎごちない会話もさりながら、女を待ち続ける純粋さ、ともすれば非現実的でセンチメンタルな甘っちょろさに鼻白んでしまうところですが、過去を捨て強くなりきれない男の弱さが随所に現れていました。かつての女を見送る時に自然と浮かんだ微笑。イブの夜、サンタがくれたのは訣別という明日への一歩。そのはじまりの、笑顔でした。
ロマンチック、という言葉が似合います。クリスマス、キャンドル、そして雪。でもこんな星の夜、人と人は身体を、そして心を寄せあい、温め合うのかもしれません。
評価:★★★☆☆