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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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最近新しい本をめっきり買わなくなって、本棚に並んでいるすでに読みつぶしたものや、実家から持って帰ってきたものをくり返し読む毎日ですが、

(それでも読書量はかなり激減している、情けない日々ですが)

『源氏物語』を読み終えて次に手に取ったのがこの本。

明治の軍人・乃木希典の生涯を綴った【問題作】。

問題作、と紹介されているのは、明治帝に忠誠を捧げ「軍神」と崇められた乃木将軍に対し、日露戦争の旅順での采配ぶりから戦才のない愚将の烙印を押しているからかもしれません。

歴史的評価を創作物である「小説」から読み手が下すほど滑稽なことはないと思いますし、司馬氏の描いているのは、「軍神」でもなく「愚将」でもなく、乃木希典という血の通ったひとりの人間なので、ただその生から死までの濃密な時間を、字を追いながら伴走することで、生涯を取り巻く数々の偶然と必然、絡み合う因果律のようなものを感じるばかりです。

生まれいでた場所、育った環境などは、乃木の精神形成に大きな影響を及ぼしたことは間違いありませんが、それを己の血肉とし、人生の基盤を幼い頃からしっかりとつくりあげた乃木の生きざまは、非常に芯の通った理想的な一本道であったかもしれません。

己の資質を知り、屈辱に耐えたことも、その基盤があればこそ。

そしていかにして死を迎えるか、それを長い長い時間をかけて問うていくのが、生でもある。

乃木は生と死を鮮烈に過ごし、そして迎えた。たまたま時代が彼を呼び歴史に名を残したことで、誰もが考えるべき生と死について、気づくきっかけを与えてくれた。司馬氏もまた、乃木という材料を使って、創作者としての観点から人間の生きざま、死にざまというものを描いたにすぎない(と、感じた)。

今この瞬間も、生は少しずつ削られている。タイムリミットのその日まで、自分なりの答えを見つけ出さなくてはならないのだろうと思う。

 

そういえば、本棚に並んでいる中からこの本を取った時、「やたら汚いな~。古本屋で買ったんだっけな?」と思いました。でも値札のあとも見当たらないし、おかしいな~と発刊日を見たら・・・。

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私が買えるはずがない!

親の本、間違えて持ってきちゃった?

 
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