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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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今回は、アニメ作品2本です。

「映画カテゴリーに入れるな!」と怒られそうなのも含めて。

 

『千年女優』

『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督の映画ですが、それよりはよほど複雑な作りになっています。

往年の大女優・藤原千代子は、少女時代に出会ったある男性に恋をしました。

成長し、売れっ子女優になってからも彼のことが忘れられず、

いくつも挿入される劇中劇にては役柄と一体化して、名も知らぬその男を追い続けます。

いったいどこまでが現実でどこまでが虚構なのか、わからなくなります。

《千年》とは、千代子が演じた映画の舞台が千年(過去~未来)に及ぶという意味でしょうが、

本当に千代子が千年もの間、ひとりの男を想い続けたような錯覚を憶えます。

「鍵の君」と呼ばれるこの男、顔が映りません。

でも、千代子が忘れられないくらいの素敵な男性なのだと感じるポイントは、その声です。

ドキッとするくらい美声の声優さんでした。

かつて好きだった人やモノって、成長してから見ると、「あれ?」と思うことが多々あります。

たとえば、子どもの頃大好きだったお菓子。

ひさしぶりに見つけて即買いし、ひと口食べてみれば、「あれ?」。

これよりおいしいものなんてありえない! と、ずっと思っていたはずなのに。

さらにたとえるならば、たまたま電車で乗り合わせたカッコイイ人。

ひとめぼれしたはずが、再び出会ってみれば、「あれ?」。

こんな平凡な顔じゃなかったはずなのに。

センセーショナルな出来事は、記憶の中に誇張して刻みこまれます。

千代子と鍵の君の出会いも、センセーショナルでした。

だから、この声も、千代子の《美化》なのかもしれません。

劇中劇にてくり広げられる『君の名は』ばりの千代子と彼の波瀾万丈な恋は、

あくまで千代子視点で語られているため、どこまでが真実なのかはかりかねます。

真実は、きっと千代子のラストのひとことにあるのでしょう。

そう、老いも若きも、恋する女の力は無限大。

評価:★★★☆☆

 

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』

関西地方だけらしいのですが、よく夕方にアニメ映画を放送していました。

11、2歳の頃でしたか、その時もたまたまテレビで流れていたのですが、

苦手なSFものだったので最初はながら観だったのが、次第に惹きこまれて最後まで観てしまいました。

よくわからないながらも、現実社会と通じる世界観ととぼけた主人公(声が森本レオ)が魅力的でした。

それがかのエヴァの製作会社の初作品と知ったのは、だいぶあとになってからのことです。

「エヴァブーム」なるものが社会を席巻した時代、私は高校生だったと思いますが、

これっぽっちも興味ありませんでした。

今さらになって手を出したのは、

店で借りるにはちと抵抗があるアニメものも平気な宅配レンタルDVDを利用するようになったからです。

「まあ、あれだけ社会現象を巻き起こしたのだから、観て損はあるまい」という軽い気持ちでした。

アニメ的演出におもはゆいものを抱えながら、TVシリーズ最終巻を迎えたものの、

「・・・?」でした。

で、あんなにひっぱっていた人類補完計画って、いったいなんだったのかしら・・・。

映画が作られたのもやむなしでしょう。あんな終わり方されたら、ファンはたまりませんね。

で、この劇場版ですが、

ちょっとびっくりしました。かなり生々しいです。

この作品のファン層の年齢はわかりませんが、あの描写は大丈夫だったんでしょうか。

TV版よりは、とりあえず納得のいく終わり方だったと思います。

途中でいきなり実写がさしはさまれるのは、いきなりこの世界から現実に引き戻されるようで興ざめでしたが。

話によると、そこに映っていた女性は声優だとか。

アニメファン向けだから仕方ないのかもしれないけど、私にはダメでした。

どうやら、また続編が作られているようですね。もうおなかいっぱいなんだけど・・・。

これはシロート的な印象なのですが、

今までのSFアニメは、主人公と、戦うべき敵、救うべき世界、の3つで構成されている印象でしたが、

この作品は、あくまで主人公である自分と、敵味方含め自分以外の他者、の存在しかないように思います。

二者間の構図は、いつしか自分自身もまた問いかけるべき他者となり、

結局自己へと回帰していく、スパイラル。

心は無限です。

自問自答をくり返す心象風景は、孤独ではなく神話の如く壮大な世界です。

で、結局人類補完計画って、なんだったのかしら・・・。

評価:★★☆☆(2.6)

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