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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『ムーラン・ルージュ』

ミュージカルには馴染みのない人間ですが、

最初に入りこめるかどうかが肝心です。

入りこめたら、あとはその世界に酔いしれるだけ。

ニコール・キッドマンの美しさったら、もうもうもう・・・。

娼婦なのに下品でない。

江戸時代、遊女なのに知性も教養も完璧に身につけていた吉原の花魁も、

きっとこんな感じだったのでしょうね。

彼女の歌とダンスに、ため息ばかりついていました。

ユアン・マクレガーも素敵な歌声。

ふたりを取り囲む人々、風景、色彩も、鮮やかで飽きず、

耳に馴染む音楽も、ベタベタなストーリーによく合っていて、

幼い頃おもちゃ箱を開いた時の胸の高鳴りに似ていました。

ラストの展開は急ですけど・・・。

評価:★★★☆☆



『ALWAYS 三丁目の夕日』

婚家には、この原作である『夕焼けの詩』が全巻そろっています。

西岸良平ファンである姑や義妹は、この映画をテレビでやっていた時、

開始5分で観るのをやめたそうです。

「原作と違いすぎる!」というのがその理由だとか。

幸いにも私は原作を読んだことがないので、

原作では兄ちゃんである《六さん》がかわいらしい堀北真希になっているとか、

原作ではじいさんである《茶川さん》が若い吉岡秀隆であるとか、

原作では美人でない《ヒロミ》がスリムな小雪になっているとか、

さして気になりはしませんでした。

しかし、これまた原作ファンであるツレが、

横でしじゅう「これは原作と違う」「これは原作のまま」といちいち教えてくるのがうるさく、

あげくに「このオチは○○」とまで言い出すので、

大喧嘩になりました。

それはともかく、純粋に《いい映画》です。

やはり現代人は、こういう癒しを求めているのでしょうね。

いろんな厳しさもあったはずなのに、

広い空を見上げて、今日が終わることを感謝しつつ明日を待ち、

自分の、そしてこの街の拓ける確かな未来が見えていた、

昭和30年代という時間を、知らないはずなのに懐かしんでしまいます。

ところどころさしはさまれる、街の人たちのエピソード、

ひとつひとつがあたたかく、涙がこぼれます。

キャストもミスがありません。吉岡秀隆と淳之介役の子は絶品です。

ただ、茶川さんとヒロミのシーンは、そこだけ三丁目ぽくないと思っていたら、

やはりオリジナルストーリーだとか。

無理して色気を出さなくてもよかったのに。

評価:★★★★(4.8)

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