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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『ノッティングヒルの恋人』

「身分違いの恋」という言葉に弱いです。

お金持ちと貧乏人、教師と生徒、異世界人と人間・・・。

小説や漫画には描き尽くされたテーマです。

もちろん、映画にもよくあります。

『ローマの休日』や『ジェイン・エア』『プライドと偏見』などは大大大好きです。

この映画も、その「よくある」恋愛がテーマなわけですが・・・。

「なんちゅーか、ベタベタやねん」。

とある偶然で出会い、運命的に恋に落ち、でもその立場の差から気持ちがすれ違い・・・。

そしてお約束のハッピーエンド。

ありえない展開はよろしい。そもそもこんな恋愛がそこらに転がっているわけではないのだから。

でも、酸いも甘いもかみわけたハリウッド女優が、「偶然」「一瞬で」恋に落ちるんでしょうか・・・?

なったことはないから、わかりませんけれども。

観ている側としては、主人公に感情移入しなければならないから、

ベタベタでも恋に落ちる理由はちゃんと描いてほしいと思うのです。

「運命の恋に理由はない」と言われりゃそれまでですが。

恋愛コンプレックスのある人間(あるいは恋愛至上主義でない人間)には、

あまり向かないようです。

評価:★★☆☆(2.5)

 

『それでもボクはやってない』

ごく一般的なフリーター青年が満員電車で痴漢容疑で逮捕され、

無実を訴えて起こした裁判を描いたドラマです。

痴漢に対しては、なみなみならぬ憎しみを抱く私ですが、

そこに冤罪が多いことは、もちろん知っています。

職場の営業さんの友人が、一度痴漢の冤罪で拘留されたらしいのですが、

警察の取調べは映画と同じようにひどいものだったそうです。

こちらの言い分も聞かず犯人と決めつけられ、人格を否定され、

通勤電車だったため同じ時間に乗っていた目撃者を探し出し、

なんとか身の潔白を証明できたそうですが、

「もう絶対に警察は信用しない」と、我がこと(・・・?)のように怒っていました。

映画の主人公も、警察どころか、親や友人、弁護士に対しても、信頼を寄せているようには見えません。

その立場になってみないとわからない、あまりにも孤独な絶望です。

映画の内容は、逐一、リアルです。

留置場のシーンから始まり、法廷のやりとり、傍聴人の発言、弁護士や裁判官の仕事ぶり、

そしてなによりも、日本の裁判の現実。

「裁判は真実を明らかにする場所ではない」

最後の台詞が重く響きます。

人が人を裁くという行為の重大さ。

もし私が将来的に裁判員に選ばれてしまったら、

この裁判に立ち合ったなら、

私はどちらを選ぶのでしょう。

主役を演じた加瀬亮、役所広司や瀬戸朝香、もたいまさこ、小日向文世など、

役者陣の抑えた演技が、法廷劇を盛り上げます。

評価:★★★★(4.7)

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