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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『ダヴィンチ・コード』

学生時代、イタリアに旅行したのですが、

その時目の当たりにした『最後の審判』には、圧倒されました。

偉大な芸術を目にした時、言葉はなにも浮かんできません。

ただそこに神の姿を見、ひれ伏し、祈りたくなるのです。

『最後の晩餐』も同様です。

ただ訪れた期間が修復中で、ゴンドラに乗った係員がせっせと仕事していたので、

ちょっとそのあたりの感動が薄れてしまったのですが。

その作者レオナルド・ダ・ヴィンチ。

歴史上最も才に秀でた芸術家がもたらしたさまざまな謎は、世紀を超えて語り尽くされています。

その謎を基にした小説の映画化。話題になり、関連番組もたくさん放送されました。

で、実際その内容はというと、謎解きというよりは冒険映画の感がありました。

2時間以上ある長い映画なのですが、原作を詰め込むにはやはり無理がありましたね。

大オチはともかく、ある程度のオチは展開で読めましたし。

ヨーロッパの歴史はそのままキリスト教の歴史と言い換えても良いと思いますが、

宗教戦争に無関係の日本では、背景を理解するには少し難しすぎたかもしれません。

私自身もキリスト教には無縁の生活で、キリストの伝記漫画を読んだくらいの知識しかありませんし、

キリストが神であるか人であるかという問題がどうしてここまで深刻なのか、

ニュアンスでしか受け取れないのが残念でした。

それにしても豪華な役者陣。トム・ハンクス、イアン・マッケラン、ジャン・レノ・・・。

ヒロイン役のオドレイ・トトゥは、『アメリ』の主演です。まったく違う雰囲気で、最後まで気づきませんでした。

評価:★★★☆(3.7)

 

『下妻物語』

ロリータ少女とヤンキー娘の奇妙な友情。舞台はド田舎・下妻。

漫画みたいな話が漫画みたいな映画になりました。

バカバカしいかと思いきや、これが意外にハマるんです。

深田恭子と土屋アンナのステレオタイプなビジュアル、

阿部サダヲや宮迫博之、樹木希林、岡田義徳の名脇役たちがさらに劇画調を盛り上げ、

実写のリアル感を完全に払拭しています。

でもジャスコが生命線である下妻の長閑さとのミスマッチが妙に現実的で、

「アリかも」と思わせる見事な演出です。

深田恭子演じる桃子は、ロリータに身を包む不思議娘かと思いきや、

ほややんとした口調で自分の価値観をまっすぐ語る強い人間です。

一方の土屋アンナ演じるイチゴは、特攻服を羽織ってパラリラパラリラ下妻を疾走しつつも、

本当は友達や伝説を大切にし、窮地を救ってくれた男にひと目惚れする純情な女の子。

私が十七だった頃は桃子でもイチゴでもありませんでしたが、

 「人はひとりで生きていくもの」とはっきり言える桃子のような人間に憧れていました。

尾崎豊が好きで組織が嫌いでもイチゴのように高校デビューはできませんでした。

一見交わるところのないふたりですが、

自分というものをしっかり持っているところは共通しています。

誰かから押しつけられたわけではないそういう価値観を自然と産み育て、

これからもきっと大切に守っていくであろう、

自分の足で駆けていくふたりのキラキラ輝く未来が、

田舎道の向こうに見えるようです。

評価:★★★★☆

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