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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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連ドラでも映画でも、とにかく怪しさ満載の演技をする岩松了の初監督作品です。

オダギリジョー(息子)と原田芳雄(父親)のふたりが繰り広げる息子の結婚式までの日々が、田舎の景色を背景に淡々と綴られています。

眼鏡にリュックにチェックのシャツに皮靴、というアキバ系ダサ男の民男。息子にいつ恋人を紹介するか悩む伸男。民男のお見合い相手の瞳は清楚を絵に描いたような超美人。民男にやってきた遅き春に、祝杯をあげる親子。

来るべき佳日に向けてしあわせいっぱいの生活のはずが、天井裏にニューヨークへ行っているはずの叔父が棲みついていたり、今は使われていないはずの祖父の診療所が老人たちのあるまじき憩いの場になっていたり、伸男・その恋人・叔父がいつの間にか三角関係になっていたり、しあわせとは程遠い地味で生活的な波乱が親子を少しずつ取り囲んでいきます。

波はやがて足元にかぶり、そして全身を覆いつくしていく。それに気づいた瞬間、民男と伸男は手に入れたはずのそのしあわせをみずからたたき壊して走り出す。道しるべもなにもない、ふたりだけしか歩かない世界へと。

岩松了といえば三木聡ファミリー。映画で観たのは亀は意外と速く泳ぐだけですが、たいがい意味不明でちょっとズレている人たちばかりが出てくるお話でした。当然のように出演していて何の違和感もなく世界観になじんでいただけあります、岩松了。これもやはり三木聡の匂いがする、「意味不明でちょっとズレているパターン」の作品です。

ただ違うのは、非常に不愉快な場面が多いところ。

『亀』のズレ感は最初から最後までファンタジックでしたけれど、このお話には携帯電話中毒の男(故・忌野清志郎)や、いいトシをして異性への欲求が尽きない男女や、舅を誘惑? する嫁や、次から次へと不快感を醸しだす展開が続きしかも若干リアルなので、ズレがズレであることに気づかず、だからオチでいきなり段差がついてすっ転んでしまう。

世界観にのめりこめなかったら、観る側としては失敗です。

オダギリジョーはどれだけダサ男になりきろうとしてもやはりオダギリジョーですね。カッコイイんです。磨けば光る、「民男」ではない、ということがわかってしまいます。

原田芳雄もしょせん原田芳雄です。カッコイイんです。私生活がちょっとダメな親父でも。原田芳雄みたいな義父なら一緒にお酒を酌み交わしたいですし、ウェディングドレスで抱きつけというなら抱きつけます(いや、自分の義父ならできない! というわけではありませんが・・・)。

だからオダギリジョーと原田芳雄と麻生久美子の3ショットはまったくよくできていて、ごくごく自然なんです。それも失敗のような気がします。

良かったのは大竹しのぶだけです。あれだけキャリアを積んだ大女優なのに、いかにも洗練されていない、だらしないおばさんを演じられるというのは立派です。この人の出てくる場面の不愉快さは、逆に痛快でした。

それにしても麻生久美子の浴衣姿、美しすぎます。同い年ですか・・・_| ̄|○

評価:★★☆☆(2.8)

 

<特別編 ヤスオーのシネマ坊主>

 まず結論から言うと、僕はこの映画とても良かったんですが、非常に世間の評判は悪いですね。一緒に観たさや氏の評価も最悪でした。たしかにラスト30分まではそんなに面白くないですよ。ただ、ラストの結婚式からの展開が素晴らしいんです。だから僕は観終わってまず、「いや面白かった。結婚式になってからのストーリーが良かったよな~。」とさや氏に言ったんですが、まったく同意は得られなかったです。まあ、結婚式でのストーリー展開が気にいらない人は、この映画は面白くないでしょうね。この監督は、この結婚式のシーンが撮りたくて、この映画を撮ったでしょうから。

 僕は、携帯電話を持ちはじめたのがかなり遅かったんです。勤めはじめてから必要にかられて仕方なく持ちはじめましたけど、大学時代はさや氏も含め同年代の知り合い、友人は全員持っていましたからね。お金がなかったからじゃないですよ。携帯電話が大嫌いだからです。誰かと会っている時に、他の奴と携帯電話でメールや電話をすることほど失礼なことは世の中なかなかないんじゃないかと思ってるぐらいですから。「お前は誰とおんねん!そいつとしゃべりたいんやったら、おれと会わんとそいつとずっとおったらええがな!おれは形のうえでは一緒におるけど、お前の心は違うやつのところやん。」ということですよ。しかしほとんどの奴は悪びれずそういうことしますね。そういう奴はこの映画のラストは納得できないだろうなあという気がします。

 僕なりの解釈ですが、この映画は、父と息子が自分たち二人の世界を守る映画です。この二人にとって、自分たちの世界は居心地がいいし、そこにずっといることが二人にとっての「しあわせ」なんです。この映画の登場人物で、きちんとお互いの心が通じ合っているのは、ラストのこの二人だけですしね。お互いにラストの決断をした理由が異なるように描かれていますが、「他人を自分たちの世界に入れたくない」ということで共通しています。そこにさらに民生の母がいることが、この二人にとっての理想郷なんでしょうね。

 もちろん、世間の価値観から考えると、この二人は親離れ、子離れができず、人生の次のステージに行けない、ダメな奴ですよ。だけど僕は、それもありなんじゃないかと思いますね。結婚式での展開は「そりゃこうするしかないやろうなあ。やっとやってくれたなあ!」と爽快感で胸がいっぱいでしたから。世間の多くの人々は、世間の価値観に自分を適応させようと、働いて結婚して子どもを産んでいわゆる幸せな家庭を築こうと頑張りつつ、働きもせず結婚もしない人をバカにする傾向がありますが、僕は後者の人間を前者の人間よりダメな人間とは思いませんし。 両方ダメな人間です。

評価:★4(5で満点)

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