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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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「せんたくばさみ」という漫才トリオがおりまして、数年前に一度観てハマってしまいました。

それからまた逢う日を楽しみにしていたのですが、メディアにさっぱり登場しない。いつの間にやらメンバーを替えて変名もしておりました。その名も「ビーグル38」。ようやく目にしたのは、去年の年末、ローカルのお笑い特番でした。3人ではなく2人での漫才でしたが。

「そんなんいったら日本はデトロイトメタルシティやないか」

・・・まあ、これだけを字で書くとまったくワケがわからないのですが、それはそれは衝撃的なツッコミで、それ以来しばらくはデトロイトメタルシティショックに侵されてしまいました。

と、それだけの理由でこの映画を観てしまったわけではないのですが、きっかけになったことは否めません。

主役が松ケンというのも大いに魅力的。

ポップでキュートな楽曲を好み、将来はオザケンのようなアーティストになることを夢見る根岸。が、街の片隅でギターを爪弾いても誰も振り向いてくれやしない。

なのにどういうわけだか、飛び込んだレコード会社の女社長にデスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」通称DMCのヴォーカル・クラウザーⅡ世に仕立て上げられ、今では多くの熱狂的ファンを虜にするカリスマに。

ひそかに想っていた同級生と再会するも、彼女はデスメタルが大嫌い。彼女にもうひとつの顔を知られまいとする一方、DMCの人気はうなぎのぼり。根岸の苦悩は続く。

漫画原作だけあって、登場人物の行動を実写化すると若干の無理が生じてしまいますが、そこはご愛嬌。松山ケンイチの、ドラマ『セクシーボイスアンドロボ』を彷彿とさせる困った顔芸が、ほのぼの笑いを誘います。

草食系根岸から超肉食系ヨハネ・クラウザーⅡ世への変貌ぶりも見もの。さすがカメレオン俳優です。

むちゃくちゃな行動で根岸を悩ませる女社長役の松雪泰子も、DMCを尊敬してやまないファン役の大倉孝二や岡田義徳も、いいタイミングで盛り上げてくれます。

難をあげるとすれば、DMCの音楽が「デスメタルでない」ことですかね。私はそのジャンルに興味がないためよく知らないのですが、これが「デスメタルでない」ことはなんとなくわかります。

映画『NANA』におけるブラストの楽曲(「GLAMOROUS SKY」)がパンクではないのと同じで、万人受けしない音楽を映像に流すのはイロイロ都合が悪いのは予想がつきますし、ある程度妥協しないといけないのも仕方ないんですがね。かといって割と耳ざわりが良い根岸のオザケン調甘々ポップが思いきりダメ出しされているのはどうかと思う。

とはいえ、いっぱい笑えてそれなりにジンと沁み入る、のんびりくつろぐ休日の午後には最適な軽さの作品でした。

評価:★★★☆(3.5)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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