一畑電車で宿のある雲州平田駅へ向かい、フラフラの身体を近くの温泉施設でゆっくりほぐした後、スポーツニュースもそこそこに撃沈してしまいました。
翌朝。温泉効果か、幾分身体の疲れは取れたようです。
駅前でタクシーに乗り、最後の目的地へ向かうは…。
韓竈神社です。
以前、なにげなく見ていた『マツコ&有吉の怒り新党』で紹介されていました。
「素人にはオススメできない神社」として。
普段は見ていない番組だったのに、その日たまたま目にしたのも何かのご縁だったのかもしれません。
出雲に行くにあたりいろいろ計画を練っていくうち、最後に迷ったのがこの韓竈神社と須佐神社だったのですが、ふとそのテレビ番組のことを思い出し、次に出雲に行くのはいつになるかわからないし、まだ体力のある今のうちにこの過酷な場所にあるパワースポットへ参拝しておこうと決めたのです。
ちなみにこの神社は、地図で見ると出雲神社のすぐ北東に位置しているように見えるのですが、向かうにはぐるっと日本海沿いを回らなくてはなりません。
しかもバスは生活バスが1日数本、おまけに平日しかありません。
やむなく、タクシーを予約するという最大の贅沢コースを使ったのですが…。
片道1時間と書かれていたので、参拝時間もあわせて3時間弱を見積もっていたのですが、さすがプロのドライブテクニックは違いました。くねくね坂道もスルスル、ネットで調べたバス停前の駐車場も通り過ぎて舗装すらされていない、もはや登山道ではないかと思われる山道もスイスイ。
30分も経たぬ間に、入口へ到着しました。
静まり返っています。
「最近は若い女性の参拝客が増えましてねえ」と道すがら運転手さんが言っていましたが、この日は来ていないようです…。
さて。
登ります。
登りました。
まだまだあります。
自分のゼエゼエする音以外には、下のほうで自分が乗ってきたタクシーのエンジン音と運転手さんがドアを開け閉めする音しか聞こえません。もしかしたら、「えー! まだあんの!?」というひとりごとも、もしかしたら運転手さんに聞こえていたかもしれないと思うほどの静けさです。
誰も来そうにありません。ちなみにこの神社、携帯電話の電波が入らないのです。つまり行き倒れても助けてくれる人はいません。運転手さんも「私はもう上まで登る体力はとてもありませんよ」と言っていたし…。
しかし『怒り新党』で紹介されていた別の神社(絶壁に立つ神社)よりは、傾斜がきついだけで安全です。
やっとつきました。
最後の難関です。
この岩の間を抜けなければ、到着できません。
鞄を手に持ち、カニ歩きして進みます。おすもうさんは絶対に通れません。ここを歩いたのはのべ人数はいったい何人なのでしょう。岩はツルツルです。
こうして見るとよく通れたなあ。
到着。
パワースポットという流行語はあまり好きではないのですが、カタカナの語感が気に入らないだけで、ずっと昔から人びとの信奉を集めてきた場所というのはやはりそれなりに理由があるのでしょう。人外の力の存在を示す神秘性は五感ではなく肌で感じるものなのかもしれません。
鳥の声。風の音。降りそそぐ木漏れ日。
自分も自然の一部に溶け込んでしまうような。
いつまでもその空気に浸っていたいところですが、そういうわけにもいきません。後ろ髪を引かれる思いで下山。
待ってくれていた運転手さんに「上まで行ってきたんですか? すごいですねえ~」と言われ、「ええ、そりゃまあせっかくですから…」と汗だくで答えつつ、心の中で次の目的地は日帰り温泉と決めました。
雲州平田駅から出雲駅に戻り、駅前の温泉施設で汗を流した後、出雲の旅の最後を飾るのはやっぱりこれ。
出雲そば。
おなかを満たして、帰りの高速バスへ。
いにしえの聖地を巡る旅。まだまだ行きたいところはたくさんあって、一泊二日では足りません。近いうちに必ずや再訪しなくては。
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