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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『わたしたちの教科書』

14歳というのは、特別な時期です。

思春期まっただなかの当時は、毎日を生きていくのがせいいっぱいでした。

学校や教師が大嫌いになったのも、やはり14歳の頃でした。

学園ドラマに出てくる教師はみんな生徒思いで、クラスの問題や悩みもたちまち解決。

嘘ばっかりだと憤る半面、こんな先生が本当にいたならばと淋しい思いもしたものです。

このドラマに出てくる先生は、誰ひとりとしてスーパー教師ではありません。

保身ばかり考える人、いやなことから目をそらす人、いつまでたっても生徒の名前を覚えない人、

いっぱいいっぱいで突然キレる人、自分の理想像に合わせるために現実をゆがめてとらえる人、

どの教師も私が目にしてきて、よって「教師は最低だ」という認識を確固たるものにさせたパターンです。

だからもちろん、誰もいじめを止められません。これが今も変わらない現実なのでしょう。

どんな作品でも(このドラマでも)いじめる側には家庭的背景など、

人格を損なってしまう理由があるように描かれていますが、どうなんでしょう。

完璧な親なんていませんし、親への精神的依存がなくても自分の意志で行動できる年齢だと思いますし、

14歳の犯罪理由を家庭問題に帰納するような描き方もどうかと思いますが。

いじめに理由や原因なんて存在しないと思うし。

さておき、このドラマの視点は、生徒でも親でも教師でもなく、積木珠子という弁護士です。

厳密に言えばいじめにあっていたと思われる生徒の義理の母親ですが、

感情的に動くのではなく、裁判という公正な場所で真実を明らかにしようとする点が、

非常に現代的です。

また、なにかというと「逃げるな」という盲目的な説教をたれる偽善者も多い世の中で、

「転校させた親は立派だ」という珠子の台詞も目新しい。

キャストの熱演も見ものです。

菅野美穂・伊藤淳史の抑えた演技や、

風吹ジュン・真木よう子などの個性豊かな教師陣も見応えがあります。

とくに法廷で校内にいじめがあることを告白した佐倉二朗の涙は、白眉でした。

珠子の元恋人で被告側の弁護に立つ谷原章介も役にぴったり。

題材も役者にも派手さはありませんが、作り手の気概を感じる骨太なドラマです。

いじめが本当にあったのか、明日香は自殺だったのか、

法廷で高まる緊張感とともに、学校のベールが少しずつはがされていきます。

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