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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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悲夢

キム・ギドクが隠遁生活に入る前の最後の作品です。
やはり『ブレス』と同様の雰囲気で、ギ毒は薄めです。
かつての恋人を忘れられないジン。元恋人を心底憎んでいるランは、なぜか彼の見る夢と同じ行動を取ってしまう。それぞれが見る夢と感じる現実。痛みは同じ。いつしか通じあっていく心と心。
オダギリジョー演じるジンだけ日本語だけれど普通に韓国人と会話している、とか、医者とは思えない無責任なひとことで始まってしまう関係、とか、あいかわらずの強引きわまりないギドクワールドですが、そんなことはまさにどうでもよいとギ毒に慣れている者は思うものの、オダギリジョーのファンがまちがって見てしまうと絶対に受け入れられない設定でしょう。ものづくりにあたって、閉鎖的な姿勢は必ずしも正しいとは思えませんが。
あと、ギドク作品にはめずらしくセリフが多めでした。とくにジンのように(あくまで比較的)饒舌な男性主人公ははじめてかもしれません。日本以外の国ではセリフは字幕で感じるものなので、発声が多くても気にならなかったかもしれませんが、日本語として聞きとれてしまうと、少し違和感が残りました。オダギリジョーも目力の強い俳優なので、もっと寡黙な設定にしても良かったと思うのですが。
この愛は暴力的でも野性的でもなく、互いが互いの心を優しく包んでいきます。
色彩に咲く、夢ともうつつともつかぬラスト。
ここでふと思うのでした。なぜジンとランたちの会話が成り立つのか。それを強調するかのようにギドクらしからずセリフが多かったのはなぜなのか。すべては夢であったのか。そしてそれは、荘子の見た夢なのか、あるいは胡蝶の夢であったのか…。
ジンとランの部屋や寺院デートは、ギドクらしい美的感覚にあふれていました。黒白同色という言葉を可視化した場面も印象的でした。
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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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