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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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今年の夏の甲子園は、前橋育英が初優勝を飾りました。

前橋育英は、初戦で2年生の高橋投手が9連続三振を奪い、一躍注目を集めたものの、決勝まで勝ち上がるとは予想もつかず、ダークホース的存在ではあったと思います。
今年は優勝候補と呼ばれるチームが次々敗退し、毎回抽選とあいまって先の読めない大会でした。
意外性のあるチームが勝ち残ったことで、盛り上がったと取るか、盛り上がりに欠けたと取るかはそれぞれの判断でしょうが、個人的には圧倒的に前者であったと思います。とくに一日で消化した準々決勝はすべて1点差。どの試合も目が離せない展開で、一日じゅうテレビにはりつかざるをえませんでした。

最終回、1点を追う延岡学園の攻撃は無死一二塁。セオリーなら送りバントの場面で監督は強硬策を取り、結果ランナーを進めることはできず、延岡学園はそのまま敗れました。判断に迷うところではありますが、それまでに数度こころみた送りバントがすべて封殺されていることを思い起こせば、一打にかける方へ気持ちが傾くのも無理はないかと思いました。
前橋育英も、惜しくも優勝旗に手の届かなかった延岡学園も、目をみはるのはその守備力。今まで鉄壁の守備と言えば明徳義塾のイメージでしたが、それにひけを取らない内野陣でした。剛腕や大物スラッガーなど、目に見える数字だけでは判断できない、勝利を呼び込むチームの強さは、そこにあるのだと思います。

さて、奈良県代表は桜井高校でした。
天理が奈良大附属に敗れ、智弁が大和広陵に敗れ、何十年も破られなかった郡山を含めた三強時代が終わりを告げました。この時点で、優勝はおそらく奈良大附だろうと予想していました。これまで幾度となく智弁天理に阻まれてきた奈良大附の初出場に賭ける思いが大和広陵の大型右腕立田を打ち破るだろうと思っていたのです。
が、決勝に勝ち上がってきたのはまさかの桜井。
大和広陵は立田の登板間隔を一試合ごとに開けていました。センバツの安楽投手で話題になったエース酷使論ですが、否定派からすれば正しい使い方です。準決勝でも、前の試合で智弁相手に好投した立田を決勝に備えるため温存し、二番手の三年生が先発しました。彼はエースの座は後輩に譲ったものの、すべての試合で好投する活躍を見せています。先輩の意地も垣間見えます。
が、センバツでも露呈した貧打はいかんせん解消されておらず、格下校相手に苦戦を強いられてきた今までと同様、桜井のエースを打ち崩せません。結局立田を登板させるも一歩及ばず、サヨナラ負けを喫してしまいました。
もう少し打線が機能していれば、大和広陵の初出場の目もあったかもしれません。悔し涙を流す立田の来年の夏、チーム全体のレベルアップを期待します。
「まさかの」と言ってしまうと桜井に失礼ですが、おそらく相手の奈良大附も、大和広陵が勝ちあがってくると想像していたことでしょう。そして桜井が来たことで、見ている者同様に、「勝って当然」という気持ちがわいてきたかもしれません。
選手はもちろん、監督にとってもはじめての甲子園。それが間近に迫ってきたことで、思いもよらぬ動揺が、ベンチに生まれてしまったでしょうか。
今までとは較べものにならないほど、全員がちがちに緊張していました。まさかの先制点に追加点、遠いホームベース。桜井のエースが緊急降板するアクシデント、相手からすればラッキーな状況にも流れを持っていけませんでした。10回やれば9回は勝てるであろう相手に、まさかの敗戦。一発勝負の怖さをつくづく思い知らされました。桜井の監督は、10年ほど前に斑鳩の監督としてセンバツを二度経験しています。その差が出たのかもしれません。
あっけなく試合は終わり、奈良大附ナインの夢はあっけなく潰えてしまいました。
まさに「あっけなく」という言葉しか思い浮かばないほど、ゲームセットの瞬間はあっけないものでした。
優勝が決まった瞬間、マウンドに駆け集まる選手たち、抱き合って腕をつきあげるその姿は7月のスポーツニュースでおなじみ。見ている側も思わず笑顔になってしまうほど49代表すべてが歓喜するものだと思い込んでいました。まさか、初戦を勝ったときと同じように、いやむしろ練習試合を終えたかのように淡々と整列し、淡々と一礼するチームが存在するとは、想像もしていませんでした。
桜井の監督は、技術よりも精神の鍛錬に重きを置いた指導をモットーとしているそうです。
だから、ガッツポーズは禁止はもとより、勝っても喜んではいけない。選手たちは素直にそれを体現しました。
初戦、二戦目くらいまでならアリとは思うけれど、優勝した瞬間までそれを禁じる教えに準じているのなら、選手はそうとう鍛えられているのだろうなあと感じました。
いろんな高校があるものですが、見ている側としてはちょっと興を削がれた感じです。
甲子園を目指す思いは皆同じ、とは言うけれど、公立と私立のそれでは雲泥の差があると思います。
郡山のような内外で強豪野球部の扱いを受けている公立は別ですが、桜井は一度決勝進出した経験はあるものの、甲子園出場をめざして血ヘドを吐くような練習をしている私立とはやはりモチベーションに差があると思われます。智弁天理はもちろん、実力はその二校に劣らない奈良大附もやはり、血ヘドを吐きながら朝となく夜となく、公立とは比較にならないほど練習にあけくれた日々を送ったことでしょう。そんな彼らを破って甲子園出場を決めたのですから、そこは、やはり素直に喜びを爆発させてほしかったと思うのです。そうしないと、今まで敗れて涙を流してきた奈良県球児にも、逆に失礼であると思うのです。相手のエラーで塁に出てガッツポーズするのと、勝利して喜ぶのとは、まるきり別物であると思うのですが…勝手な憶測でしょうか。

ともかく、出場する限りは全力で応援します。相手は作新学院。強豪です。正直、勝ちをつかむのは困難です。
それでも、決勝の舞台で自分たちのプレーを貫いたナインの精神力、全国レベルでまずまず及第点の投球をするエース左腕、公立校とは思えないほどガタイのいい1年生の4番、それぞれが持ち味を発揮すればまあ、そこそこの試合はしてくれるだろうと思っていたのですが…。
やはり甲子園は佐藤薬品スタジアムとは違っていたようです。
試合後監督が「先攻を取っていれば」と語っていました。「問題はそことちゃうやろ」とツッコんでしまいましたが、まあ、あそこまで全員が全員動揺しまくったかというと、違っていたかもしれません。
ホームランを打った選手も、最終回代打でヒットを打った選手たちも、エラーで出塁した選手も、皆監督の教えを徹底して守っていました。ガッツポーズ禁止や試合後の座礼など、その指導法でやや話題にはなりましたが、やはり彼らに大舞台は荷が重かったかな…と感じました。それでも甲子園でプレーしたこと、大歓声を浴びたこと、一生の思い出となることでしょう。おつかれさまでした。

ガッツポーズといえば花巻東の千葉くん。小柄な体で粘りに粘り、出塁してはチャンスを呼び込むそのプレースタイルが、良くも悪くも話題となりました。対戦校の監督が軒並みキーマンにあげ、上甲監督は千葉シフトまで敷いたもののあっさり破られ、鳴門の好投手板東は彼の粘りに根負けしました。そこまでは良かったものの、鳴門戦で指摘されたサイン盗みで一転、彼はつるしあげをくらいました。ひとりの高校生が行き来した天国と地獄。大人社会のおそろしさを感じたことでしょう。準決勝では彼らしさが失われ、打席ではすべて凡退し、なぜか上がらされたお立ち台では号泣して言葉にならず、過呼吸で医務室へ運ばれたそうです。
いったい、なぜ彼がそこまで苦しまなければならなかったのか。
まずカット打法について。野球選手としては恵まれない身体を持つ彼が、3年間かけて磨き上げたその技術を、予選からずーーーーっと一貫して取り組んできたその打法を、なぜ、甲子園で3試合も戦ってきてさんざん話題にもなっていたにもかかわらず、準決勝前というこのタイミングで、実質的禁止令を下すのか。審判部の説明としては準決勝『のみ』規定に抵触するプレーがあったと判断したそうですが、いったいどこの何をもって今までとは違うと判断したのか、きちんと花巻東側に説明はしたのでしょうか。
そして、「サイン盗み」と疑われる千葉くんの二塁ベース上での行動がなければ、果たしてその禁止令は発令されたのでしょうか。
と、邪推してしまうほどの、今回の審判部の動きでした。
サイン盗み(正確には、捕手のミットの位置をインかアウトかしらせる動きのようにも見えますが)。これはルールブックにあるように禁止されている行為ですので、注意を受けるのはやむなしと思います。といいますか、本音を吐露するならば「千葉くんがヘタこいた」です。
サイン盗みに対するルールができたのは、横浜vsPLの延長17回後のようですが、あの試合でも一塁・三塁コーチが打者へのかけ声で捕手のサインをしらせていたといいます。今でも審判の目をすりぬけて行うチームもきっと存在するでしょう。もちろんそれは違反行為ですので、何らかの取り締まりが行われるべきです。それと疑わしい行為が注意されるのも、当然です。
ただ今回の審判部への「カット打実質法禁止令」は、どうもそれと関連づけられているかのように思えてならないのです。
「高校野球は爽やかで純粋である」と信じているらしい高野連側が、サイン盗みというその信条ともっともかけ離れた行為と疑われる行動を取った花巻東を潰すため、ついでに千葉くんを潰しにきたように見えてならないのです。
「それとこれとは別」と言われればそれまで。しかし、ひとりの人間の人生を、大舞台で、それも土壇場で全否定した高野連の罪は、重いと思います。
もちろん、コメントが報道されているとおりなら、一般人だけでなく高野連の心証をますます悪くしたに違いない花巻東の監督・部長も同じく責を負うべきであり、千葉くんのメンタルケアとこれからの人生を、真摯に考慮してほしいと思います。

そしてまた、今年も夏が過ぎてゆきます。
思えばいろいろありました。例年にない猛暑。マウンドで熱中症になり意に反して降板せざるをえなかった投手たち。強豪校の敗退、東北勢の躍進。2年生世代の活躍。新たに生まれたヒーローたち。

2014年、その夏。熱かった今年の思い出を上書きするような、ますます熱い夏でありますように。
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