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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『三丁目の夕日』の作者、西岸良平の作品。

売れないイラストレーターのたんぽぽさんと、

かけだしカメラマンの慎平さん夫婦が、

貧乏な暮らしにもめげず、あかるく日々の幸せを感じながら生きていくお話です。

 

たんぽぽさんと慎平さんは仲良し夫婦。

時にはケンカもしますが、いつまでも恋人同士のような若々しい雰囲気で、

「だらしない親を持つと大変だわ」と娘のスミレちゃん(幼稚園児)に呆れられるほど。

この一家にはトラという猫もいます。

猫なのに、株式市況を聞いたり、おつかいをしたり(最終的に失敗)、

変装をして小学校にもぐりこんだり、いろいろやらかしてくれます。

西岸風に描かれると、奇妙な猫も自然と日常に溶け込んでいて、

昭和の街にはこんな猫もいたのかもと錯覚してしまいます。

 

たとえ同窓会で、友人の自慢話に引け目を感じても、

幸せは人それぞれなのだと信じるたんぽぽさん。

その日の暮らしに困っても、好きな仕事をして、愛すべき家族がいて、

あちこちに存在する小さな喜びを見つけて生きていくたんぽぽさん。

 

そんな生き方はとても素敵です。

ついつい目先の出来事にとらわれて、見落としがちな大切なものが、

ページの中にたくさん詰まっています。

 

この本はすでに絶版になっているのか、

『三丁目』ブームにもかかわらず、どの本屋にも置いていません。

ようやくブックオフで2冊見つけたものの、集めていくのは大変そうです。

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