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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『YAWARA!』がブームになったのは私が小学生の時でしたが、それ以来もう20回は読み返しています。

少女の葛藤、親子関係、ほのかな恋、とエンターテイメントの要素をぎっしり詰め込んだこの漫画で、柔道のおもしろさを知りました。もっとも、試合を観るのはオリンピックの時くらいですけれど。

才能のある漫画家だなあ、と子ども心に感動したものです。

そしてそれから20年近く経って、再び浦沢直樹という才能に出逢うこととなりました。

それが『20世紀少年』。

うだつのあがらない男が、地球制服をたくらむ悪の組織と戦うことになる--イントロダクションだけでは、まるで少年向けのゲームのごとく強引な展開の空想物語の様相ですが、読み進めていくうち、なんとも言えない、背筋を這い上るような恐怖感に襲われはじめました。

一気に読んで「こんなおもしろい漫画はない!」と意気込んでツレに勧めたら、これまたあっという間に読んでしまいました。

友達と作った秘密基地、ラジオとエロ本、正義のヒーロー、シンボルマーク。

誰でもあたりまえのように通過する少年時代の思い出。しかし誰でもあたりまえのように無邪気な時代を卒業し、秘密を共有した友達も、それぞれ夢を忘れた大人になっていく。ケンヂたちも漏れなくそうだった。平凡でありふれた人生を送るはずだった。

「ともだち」が夢を見たまま大人になってしまわなければ。

新興宗教の教祖である彼は、同時に失踪したケンヂの姉が残していった娘の父親でもある。ケンヂの作った「よげんの書」を現実化させ、恐怖に陥る日本の政界で権力を拡大していく「ともだち」に、テロリストとして指名手配されてしまったケンヂは、地下に潜伏し、かつての秘密基地の仲間たちとともに「ともだち」と戦う覚悟を決める。

21世紀目前の大晦日。彼らの目の前に現れたのは、ケンヂのいたずら書きそのままの巨大ロボットだった--。

序盤の山場で第1章は終了しています。むろん、伏線だらけで何の謎も解明されていません。原作も同じです。「ちょっと、次、次!」と漫画喫茶の棚を何度も往復してしまう、ハラハラ感は忠実です。

さてキャストですが、原作そのまま! と謳っている割には、ケンヂ役の唐沢寿明が今ひとつですね。難しい役柄ではあると思いますが。

たぶん原作でもケンヂより人気は高いと思われるオッチョのトヨエツはマッチしていると思います。ユキジの常盤貴子も美人で強くて聡明なヒロインはぴったり。歳をとっている第2章でどう演じるのか気になるところではありますが。あとの仲間もまあまあですね。皆メジャーで実力派の豪華俳優陣なので、真犯人の正体をわからなくしているところもなかなか秀逸です。

原作そのままなのは万丈目(石橋蓮司)ですね。『ガラスの仮面』月影先生、『デスノート』ワタリに続く「そのままやん!」キャラでした。

それに子役が成長してからの俳優にソックリでした。よく見つけてきたなと思います。ヤン坊マー坊とか。

しかしこの原作は、序盤から一気にスケール(風呂敷)を広げたために、すべての伏線を回収しきれず、だんだんしぼんだ風船のようになってきて、あれれという間にラストを迎えます。ゆえに映画では、続きをいったいどう興を削がない作りにしていくかが問題です。そこで重要になるのが、第2章以降の主人公となるカンナですが、これがすこぶる悪評(らしい)・・・気になるところです。

それにしても、いちばん大事な「ともだち」の正体を、もうすっかり忘れているので、原作読みなおそう・・・。

評価:★★★☆(3.6)

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