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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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8年前の映画ですが、松田龍平・新井浩文・高岡蒼佑・瑛太(この頃はEITA)と、今をときめく役者の若き姿がめじろおしです。

舞台はどうやらあまりデキがよろしくないと思われる男子校。不良グループは屋上の柵の外で何回手を叩けるかという根性だめしで番長を決めていた。

桜の季節。8回という新記録を打ち立てめでたく今年度の番長になった九條。しかし彼はゲームも学校を仕切ることにも興味はない。仲間たちもそれぞれの立場で、将来に、今の自分に向き合っていく。ある者は罪を犯して警察へ。ある者は甲子園への夢破れて極道へ。そして、九條の古くからの友人である青木もまた、今までと違う日常へ踏み出していく。

18歳。昨日と同じ毎日に違和感を抱き始めて。といって未来に夢を語れるほど幼くもなく。花はやがて枯れていく現実を知る。知れば知るほど、明日は黒く閉ざされて。

「天国」である学校で漫然と日々を過ごし、虚無的に空を見上げる九條。その「唯一の友人」である青木にとってもまた、彼は同じ存在であったに違いない。「天国」には時間制限がある。せめてその間だけでも、漫然と過ごしていたかったはずだろう。しかしゲームは九條を選んだ。学校の「トップ」となった「友人」に対し、距離感を生み出したのは青木自身だったのかもしれない。漫然と過ぎる日々は終焉を迎えた。しかし九條はそれに気づかない。気づいているのに、気づかないふりをした。毎日同じ青い空を見上げていた。斜に構えていれば楽だった。現実と向き合わずに済むのだから。その役目は青木ひとりに負わされた。青木の見た現実は黒く塗りつぶされた。青木の思いを九條が知った時は、すべてが終わったあとだった。

この世の中で自分だけが正しいと思っていた。

大人になんかなりたくなかった。

なんのために生きているのかわからなかった。

その証が欲しかった。

青春をとっくに過ぎ、朱夏の季節に入っていても、そういう時期があったことを忘れてはいない。

ひこうき雲が青い空を割るように。心をすっと切り裂いていく作品でした。

評価:★★★☆(3.6)

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