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油断大敵
あまり有名ではないが、見て損はしない映画
監督/成島出
出演/役所広司、柄本明、夏川結衣
(2003年・日)
妻を亡くし、男手ひとつで娘・美咲を育てている刑事、関川仁が主人公です。駐在所勤務から泥棒専門の刑事になったばかりの彼は、ある日、ひょんなことから大泥棒の通称「ネコ」こと猫田定吉を逮捕します。しかし、ネコは警察の取り調べをのらりくらりと交わし、ベテランの刑事をもっても自供させることが出来ません。ところが、仁の実直さを気に入った彼は、仁にあっさり自供を始め手柄を与えたうえに、泥棒刑事としてのイロハまでも教えてくれ、仁も成長していきます。
この映画は、役所広司と柄本明というビッグな俳優2人が出ているのに、ビデオ屋で偶然見つけるまで存在をまったく知りませんでしたね。全体的に野暮ったく、今風のオシャレな映画では決してないので、イマイチ話題にならなかったんでしょう。たしかにストーリー展開はまったりしてるし、映像も地味です。2003年に作られた映画とは到底思えません。1980年代の邦画の匂いがします。監督の成島出も今となっては「フライ,ダディ,フライ」なんかでそこそこ有名ですが、この頃は無名だったでしょうし。
しかし、すごい面白いわけではないですが、そこそこいい映画なんですよ。笑いあり涙ありの人間ドラマなんですが、地に足をつけて生きている生活感のある人間を一人一人しっかりと描いています。舞台となっている田舎の風景も、どこかノスタルジックでいい感じです。そして何よりも、主演の役所広司と柄本明が、役にピタリとはまっているうえに演技が上手い。この映画はこの2人の絡みのシーンが多いので、ある意味この2人がダメな役者だったら作品全体がダメになってしまうところですが、さすが大物2人といったところで、掛け合いのシーンは見てて面白かったです。
この映画が実話に基づいていて、モデルとなっている刑事や泥棒が実際にいるというところもまたすごいですね。今時こんな朴訥な刑事と、自分の美学を持った泥棒なんていないですから。僕の今の職場は刑事さん達と仕事をすることがけっこうあるんですが、ベテランの人はともかく、若い刑事さんなんて物腰は柔らかいし、スマートだし、一見銀行員やサラリーマンに見えますからね。もちろん刑事さんと仕事をするということで、罪を犯した人たちとも会ったりするんですが、美学を持っているようには到底思えない人ばかりです。
また、この映画はこの2人が演じる刑事と泥棒の奇妙な友情を描いているだけでなく、刑事とその娘という家族愛も題材になっています。父親が学童保育の女の先生といい仲になっていくと、娘は激しく抵抗し、病み上がりにも関わらず先生の作った食事を食べず、パジャマ姿で米をといだり掃除機をかけたりして、自分が1人で何でもできることを父親にアピールし、父親に再婚を思いとどまらせます。そしてこの娘はそのことをずっと気にしていたらしく、お父さんにぬか漬けを食べさせるために自分でぬか床を毎日かき混ぜたりしているんです。いくら好きな父親のためとはいえ、このくらいの年頃の子でぬか床をきちんと管理する子もそうはいないでしょう。先日見た「誰も知らない」が対照的な映画であったこともあって、この2人の親子愛にちょっと感動してしまいました。
しかし、この娘も成長して、自我が芽生え、看護の勉強をし、世界中の恵まれない子どもたちのために海外に行きたいとか言い出すんです。父親にしてみれば、まあ自分は娘のために自分の幸せまで犠牲にして、一生懸命育ててきたたわけですから、そりゃ反対しますね。しかし最後には父親として、娘が自分の翼で飛び立とうとしている邪魔はしてはいけないということを理解し、旅立たせるわけです。このあたりも感動するシーンのはずなんですが、どうも高校生の娘役の前田綾花の演技がひどすぎて、イマイチでしたね。こういう地味な演出の映画はどうしても一人一人の演技をじっくり見てしまいますから、もうちょっとマシな女優にしてほしかったと思います。
この映画の点数は★6ぐらいでしょうか。名作というわけではないですが、見て損はしない映画です。最近のTVドラマではあまりこういう作品はないので、この映画も存在価値はあると思いますね。
しかしタイトルはダメですね。ほのぼのとした映画なのに、「油断大敵」というタイトルではどこか殺伐としたイメージを抱かせてしまいます。「オイッチニ」とかでいいじゃないですか。この映画に登場するピンチを脱出するおまじないです。「オイッチニー、オイッチニー、オイッチオイッチオイッチニー」というメロディがけっこう印象に残ります。
<油断大敵 解説>
駐在所勤務から泥棒専門の刑事になった関川仁。彼は妻を亡くして以来、独りで8歳の娘・美咲を育てながら仕事に励んでいた。そして、仁がこの新任地に赴いて1年が経ったある日、だるま工場で盗難事件が発生する。数日後、美咲の自転車が故障した際、たまたま出会った男に修理してもらう仁。だが彼はこの時、男の工具鞄の中にだるま工場で飼っていたピラニアの餌の缶を発見する。実直で腰の低い仁を刑事と見抜けなかった男は検挙されるが、その正体は、何度検挙されても口を割らず最終的に逃げ切ってしまうという伝説の大泥棒・猫田定吉、通称ネコだった。