MENU | MENU | MENU | MENU | MENU | MENU |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
マルホランド・ドライブ
不条理で悪夢のような世界を感じるだけで面白い映画
監督/デヴィッド・リンチ
出演/ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、アン・ミラー
(2001年・米)
ハリウッド女優になるために、有名女優である叔母を頼ってきたベティは、叔母の家でリタと名乗る記憶喪失の女性が隠れているのを見つけます。リタが唯一覚えていた言葉「マルホランド・ドライブ」を手がかりに、ベティは彼女の記憶を取り戻す手助けをします。ある日偶然入ったレストランでリタは「ダイアン・セルウィン」という名前を思い出し、ふたりはダイアンの住所を調べ家を訪ねますが、そこには腐った女の死体がありました。
この映画は満点です。僕はデヴィッド・リンチの作品はかなり昔に「エレファント・マン」を見たぐらいなので、この映画の世界観はむちゃくちゃ衝撃的でしたね。始まってすぐのダンスのシーンから不穏な空気が漂っていて、「ああ、この映画はそんじょそこらの映画とは違うな。」と思わせます。わけのわからないストーリーと映像はこちらの理性を完全に麻痺させるんですが、この映画の持つ底知れない不気味な雰囲気が、感性的な側面を刺激してくるんですよ。それは決して不快ではなく、むしろ心地いいですね。酒に酔ったような感覚と似ています。この監督はイメージ作りが非常に上手だと思いますよ。映像だけでもこの映画は十分に見る価値があります。
特に、「クラブ・シレンシオ」のシーンはこの映画の中でもとりわけ異様な輝きを放っており、とてもインパクトのあるシーンです。ここはおそらくストーリーの種明かしのようなところだと思いますし、監督も気合いを入れて作ったのでしょう。彼の持つ独自の世界観が一番色濃く出ていると思います。
ストーリーはとにかく難解です。時間も空間も入り乱れていて何が現実なのかすら分からないような話で、考えれば考えるほど頭がこんがらがってきます。多くの同じ顔をした登場人物が途中で名前も人格も立場も変わるので、この映画が2つの世界を描いているのは間違いないんですけどね。まあ、「クラブ・シレンシオ」でのベティとリタの様子や、司会者の「すべてはまやかし」というセリフから普通に考えたら、この2つの世界というのは、ブルーボックスを開けるまでが「ある人物」の妄想の世界で、その後は「ある人物」の現実の世界で、結局はこの映画は田舎娘である「ある人物」がハリウッドを目指し、女優とレズの関係になり、結局は恋にも夢にも破れて悲惨な末路を辿るストーリーなんだなと思います。いい夢を見た後というのは切ない気持ちでいっぱいになりますが、この映画も切なさと悲しさでいっぱいです。
しかし、この映画は完璧に解釈するのは不可能だと思いますし、僕は解釈する必要すらないと思いますね。僕がこの映画で一番気に入ったところというのは、映像においてもストーリーにおいてもわけが分からないところですから。この映画はわけがわからないからこそ見ていて不安になるし、底知れない不気味さを感じるんだと思います。
他の映画だったら映像はともかくストーリーが分からなかったら全然面白くないですけどね。僕が最近見た映画でストーリーが難解な映画を挙げるとすれば「ドニー・ダーコ」と「メメント」ですが、僕のこの2つの映画についての評価は決して高くないです。しかし「マルホランド・ドライブ」は、その不条理で悪夢のような世界を「感じる」だけで十分面白いですし、逆に意味をもってしまうとその不気味な世界観が壊れてしまい、つまらなくなるような気がしますね。
ただ、まったくむちゃくちゃな話ではないですよ。おそらく「ある人物」の妄想であろう世界に登場する殺し屋がすごい間抜けなことや、僕はタバコをとてもたくさん吸うので映画で灰皿が出ると絶対見てしまうんですが、この映画にも何度か登場する灰皿なんかには、きっと意味があると思います。ちょこちょこ出てくる不気味なカウボーイも何を表しているかはだいたい分かります。ストーリーを理解する手がかりはこれ以外にももっとたくさんあると思いますよ。僕はストーリーを理解するのを放棄しましたが、純粋に謎を解くということだけでも、この映画は楽しめるんではないでしょうか。
この映画はキャスティングも文句なしです。主演のナオミ・ワッツは「ザ・リング」に出てた人ですね。「ザ・リング」の役はそんなに難しくない役だからあまり印象に残っていませんでしたが、この映画ではすさまじい熱演じゃないですか。明と暗を見事に演じ分けていましたよ。ローラ・エレナ・ハリングという人は初めて見ましたが、この女優も妖艶な美しさが映画の雰囲気に合っていて非常に良かったです。