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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ホテル・ルワンダ
 

「知るべき」映画だが「見るべき」映画とは思わない。

 

c100635611_l.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

監督/テリー・ジョージ

出演/ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、

ホアキン・フェニックス

  (2004年・英、伊、南アフリカ)

 

 1994年のルワンダという国での話です。この国ではフツ族とツチ族の民族紛争が終息し、和平協定が結ばれることになっていました。しかしラジオで、「フツ族出身の大統領がツチ族に殺された」というニュースが流れたのをきっかけに、政府軍とフツ族によるツチ族と反乱軍への虐殺が始まりました。自らはフツ族ですがツチ族の妻を持つホテルの支配人のポールは、家族をホテルにかくまいますが、逃げ場を失った人々も次々とホテルに押し寄せてきます。1200人以上の人をかくまうことになったポールは、国連や諸外国の救援を待ちます。
 
 この映画は、自分が無知であったことに気づかせてくれたという点で、たいへんためになった映画です。ルワンダという国は名前しか知らなかったし、ルワンダがベルギーによる「フツ族」、「ツチ族」の区分けによって国内がムチャクチャになっていたことも知らなかったし、そもそもルワンダ紛争と虐殺の事実を知りませんでした。この映画に登場するジャーナリストが、「今起きている虐殺の映像を世界に発信しても、他国の人々はその映像を見て『怖いね。』と言うだけでディナーを続ける。」とか言っていましたが、映像すら見ていない僕はその人達以下ですね。

 僕以外にもルワンダ紛争について知らない人はいるでしょうから、このような映画が作られることは大変有意義なことであると思います。しかし、この映画を見て面白かったかというと、たいへん言いにくいですが面白くなかったです。「知るべき」映画だとは思いますが、「見るべき」映画とは思いません。

 僕はこの映画は虐殺の実態を生々しく描き、残酷な現実を見る者に突きつけるような、かなり重たい作品だと思っていたんですよ。しかし実際はそうでもなくて、暴力描写も少ないし、娯楽要素もあり、わりと普通の映画です。いや僕は別に残酷なシーンが好きなわけではないんですよ。ですが、インターネットでの署名運動により公開が実現したと言うわりには、何やこの程度かいなと、ちょっと拍子抜けしました。どうして公開が危ぶまれたのかよく分かりません。この程度の映像だったら、ドキュメンタリー番組でなんぼでも見れるでしょう。

 それに僕がこの映画を見て、自分の意識が何か変わったかといえば、何も変わっていませんから。例えば、国連軍が外国人だけを助けて撤退してしまうシーンがあります。国連にとっては、ルワンダは救う価値のない国で、ツチ族は救う価値のない人々なんでしょう。しかしルワンダが原油やダイヤが産出されてもっと豊かな国であったり、ツチ族のルーツが西側諸国の人々と同じであったりしたら、もっと事態は変わっていたかもしれない。これは一言で言うと差別です。ですがこの映画は見る人に「国連軍は最悪や!差別しやがって!」と思わせることはできても、見る人1人1人の意識を変えるほどのパワーは持っていない映画のような気がします。

 あと、史実は別にしてエンターティメントとしての映画として言わせてもらうと、この映画は主人公のポールの家族愛が大きなテーマの1つなんですが、こいつの妻がどうしようもないオバハンなんですよ。ポールは機転も利き、勇気もあり、行動力もあり、プロのホテルマンとして培った信頼や交渉術も持っている、闘う力を持った人間です。しかしポールがその力で1200人以上もの人々を救うためにがんばっているのに、オバハンの方は、寝て、食って、怯えて、たまに兄夫婦を探せと言って、ホテルにかくまっている人全員のために頑張ろうとしているポールをなじってと、何の役にも立っていないうえに自分達のことばかり考えている人間です。「お前のダンナが体張って頑張ってるんだから、お前も少しは頑張れよ!」とイライラして困りましたよ。

 おまけにこの映画はこのオバハン以外を見ても、「この人は立派だなあ。」と思える人間がポール以外まったくいません。ポール1人だけが極端に魅力的に描かれています。僕は昔「ブレイブハート」という映画を見て涙が出るくらい感動したんですが、この映画のどこに一番感動したかというと、英雄ウィリアム・ウォレスが立派だったということではないんです。闘い続けた彼の勇気に彼の周りにいた自分の保身ばかり考えていた人も感化され、最後にみんなが立ち上がり闘ったところなんです。まあ、事実を基にした映画なので、実際にポール以外に称賛すべき人間がいなかったんだと言われればそれまでですけど。

 この映画の評価は★1ですね。たぶんこの映画にこんなに低い評価をつけるのも僕ぐらいでしょう。
 

 




<ホテル・ルワンダ 解説>

 アフリカのルワンダで内紛による大量虐殺の危機から人々を救った、実在のホテルマンの勇気と良心を描いた感動ドラマ。主演はスティーヴン・ソダーバーグ監督作品の常連、ドン・チードル。『父の祈りを』など脚本家として活躍するテリー・ジョージが脚本、監督、製作を手がけ、1200人もの命を守り抜く男の勇姿をヒロイックに描き出す。日本公開は危ぶまれていたが、若者によるインターネットでの署名運動が功を奏し、公開が実現した話題作。
 1994年、ルワンダの首都キガリ。高級ホテル「ミル・コリン・ホテル」で働く支配人のポール(ドン・チードル)は毎日順調に仕事をこなしていたが、ある晩、ホテルからの帰宅途中に街で火の手が上がっているのを発見する。

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