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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『攻殻機動隊』で世界に名を馳せた押井守監督の作品です。

・・・とは言いながら、実は『攻殻機動隊』を観たことはなく、初押井作品だったりする。

DVDには予告編が収録されていないのですが、この映画をもとにしたゲームの宣伝が入っていて、それが予告編代わりになっています。

それがあったおかげで、世界観がわからないまま観終えずに済んだような。

舞台は近未来? 名前は日本人で新聞も日本語ですが戦闘機の中での会話やテレビニュースや観光客は英語を使う、よくわからん世界。で、戦時中。

国同士の争いではなく、会社同士の争いらしい。

飛行機に乗っているのは少年。でもタバコを吸うし、どこか人生を達観している。その上司も少女の風体。でもタバコを吸うし昔はエースパイロット。しかも娘がいる。

彼らはどうやら、「キルドレ」と呼ばれる、「永遠に歳をとらない」子どもたちらしい。

そのあらましが説明されるのは、2時間もある物語の後半部分。

それまでは、とにかく、眠い。

あまりアニメで眠くなった記憶がないのですが、このアニメは眠い。

台詞が異様に少ない。無言の長回しが多い。戦争ものなのに戦闘シーンが少ない。

もちろん、場面場面が重要なファクターであることはわかるのですが・・・。

なぜ、「キルドレ」が必要なのか。それは『ハウルの動く城』の舞台としても描かれた「無意味な戦争」と大きなかかわりを持っているように思えます。

「戦争が無意味である」ことはあらゆる場所で言い尽くされています。原因を伝えないまま冒頭からいきなり戦争の世界に入り込まされるこの映画でも、そういう世界観であることはわかります。

つまり、それをわざわざ作品半ばで数少ない台詞を割いて伝えることはなかったように思うのですが、

戦争、つまり大人――大人として生きることを許されている人々――の犠牲者であるキルドレたちの刹那的でどこか冷めた生き方を観ていると切なくなります。

そして、彼らが救われるラストが用意されているかというと、決してそうではない。

『THE WINDS OF GOD』でキンタが叫ぶ、

「死は、新しい生のはじまりなんだ」

あの言葉はアニキとキンタの未来へ至宝のように輝くひとことであったけれど、

この作品においては救いの途は一切存在しない。

戦争は語られた理由がある限り永遠に終わらないし、キルドレは量産され続け、生死が日常的にくり返される。

あと味が良さそうな体を装いながら、実は解決していない終幕にはモヤモヤが残るのですが、

でも、仕方ないのかもしれません。

だって、「戦争は永遠に終わらない」のだから。

目を瞠ったのはCGの技術です。空の青さ、雲の質感、風のそよぎさえ感じてきそうなみずみずしさです。

CGを多用するアニメはあまり好きではないのですが、戦争シーンの迫力も見事ですね。

キルドレが乗る戦闘機は零戦のようなレトロ感ですが、それも好きな人ならたまらないかもしれません。

がっかりなのが、またしても声優。

菊池凛子・加瀬亮・栗山千明と、国際舞台でも活躍している演技派俳優を持ってきましたが、脇役の本職さんと較べると完全に格落ちです。もうやめませんか、こういうの。

唯一良かったのが、谷原章介。ドラマでも演じることが多そうな、どこか軽薄だけど本質を見極めている役柄でしたが、スタッフロールまでずっと声優さんかと感違いしていました。いや、良い声だった。

評価:★★☆☆(2.8)

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