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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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冒頭10分で滂沱の涙、必至です。

『ゲゲゲの女房』にハマっている私としては、「夫婦」というキーワードに弱い。

カールとエリーの無償の愛が静謐な画面いっぱいに溢れています。説明的な台詞や画面がなくても、夫婦が病める時も健やかなる時も、幸せな時も悲しい時も、互いを大切にし、支え合い、ふたりにしか築けない時間と空間を築いてきたことが伝わります。だからこそ、カールの伴侶を喪った絶望感が、痛いほどに迫ります。

しかし、本篇はここから。ふたりで叶えられなかった夢を叶えるために、思い出の詰まった家に風船をいっぱいつけて、カールじいさんの冒険が始まる。

空を飛ぶ冒険活劇、といえばやはり『天空の城ラピュタ』を思い出します。子どもの頃に味わったドキドキハラハラを超えるものはない、日本が誇るアニメ映画の中でも不朽の名作だと思いますが、このディズニー作品もどうしてなかなか、たいしたものです。

頑固な性格だけど、情にはもろいカールじいさん。お調子者で子どもらしい子どもだけど、実は少し複雑な家庭環境にあるラッセル、カールをご主人さまと慕う犬のダグ、ラッセルが可愛がる怪鳥のケビン、まるで桃太郎のような一行は、パラダイスの滝を目指します。

その後は冒険活劇らしく、御一行と悪役との戦い⇒大団円へと向かうわけですが、それはそれで迫力があり、そう来たか! な演出もあり、笑いありと楽しませてくれるのですが、どうも消化不良なままラストを迎えてしまいました。

それは悪役であるチャールズ・マンツの描き方なのですが。

『ラピュタ』のムスカは余韻を残す最期を遂げて、悪の華という印象を与えたのですが、どうもマンツは中途半端です。嘘つきよばわりのあげく冒険家協会から追い出され、ひとり幻の怪鳥を求めて飛行船で旅立ったあと、たくさんの犬に囲まれて不自由ない生活を送っていたとはいえ、怪鳥を探し続けたこの何十年は、ひたすらに孤独なものであったことでしょう。名誉挽回のためにケビンを生け捕りにしようとたくらむのも、その背景を考えれば無理のないことです。ケビンを思うカールやラッセルの気持ちから描かれているために、このあたりは完全になおざりです。さらに救いようのない決着には、肩すかしをくらったような気になりました。犬たちを大事にしていたし、根っからの悪人には見えませんでしたし。まあ、今『ラピュタ』を観たら、もしかしたらムスカに感情移入できるようになっているのかもしれませんが。

それ以外は、アニメ技術も声優も、ラストシーンのエピソードもすばらしかっただけに、ちょっと残念です。

女性なら、最初の10分で自分の身に照らし合わせて考えてしまうかもしれません。私がいなくなったら、うちの人どうなっちゃうんだろう。

そして最後には安心するのです。ま、なんとかやっていけるよね。でも写真のひとつくらい、肌身離さず持っておいてほしかったな。

評価:★★★★☆

 

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~

 去年見た「ウォーリー」と同じピクサーの映画ですね。僕は去年映画をあまり見てないんですが、その少ない中で一番良かったのが「ウォーリー」で、完璧としか言いようがない映画なので点数は満点でした。今回の映画は「ウォーリー」に比べると完成度は落ちます。前回見た「サマーウォーズ」よりも下だと思います。しかし僕はこの映画は感動したし、かなりの高評価ですね。★9にしときます。

 ここまで高い点数をつけるのは最初の10分のカールとエリーとの出会い、結婚、エリーの死までの描写につきます。僕はここを見て今年初めて映画で泣きそうになりました。セリフは一切ないんですが、そんなものがなくても二人の愛情の深さ、幸せな日々、そしてエリーが死んだ後のカールの喪失感、空虚感が映像を見てるだけでぐわ~っと伝わってきます。開始10分の出来だけなら僕が今まで見てきた映画の中で一番良いんじゃないでしょうか。ペンキ塗りたての郵便ポストにカールが間違えて手形を付けてしまい、エリーも笑って自分の手形をつけるんですが、一人ぼっちになったカールがエリーの手形にちょいちょい手を合わせているところなんかは、もう本当に素晴らしいとしか言いようがない。時の移り変わりと二人の変わらない愛情を色々なネクタイを締めることの繰り返しで見せるところや、死ぬ間際病室のエリーの元に手紙のついた風船が届くが、エリーがそれを見ずにカールに手を伸ばして冒険の書を渡すところなんかも上手いなあと思いますね。「二人は仲良し夫婦でしたが子どもはいませんでした。」ではなく、婦人科のシーンをギラっと入れているところもごまかしがなく僕は好きです。人生というのは悲しみがあってこそ喜びがありますから。開始10分の出来がここまで良いんだから、カールじいさんが風船のついた家で二人の夢の場所へ飛んでいくところで終わってもいいぐらいの映画ですよ。

 言い換えれば、この映画はその後はここ以上の盛り上がりがなく、尻すぼみの印象は否めないんですね。やはり開始10分が素晴らしい映画とラスト10分が素晴らしい映画を比べたら後者が評価されるのは仕方ないでしょう。カール達とマンス&犬軍団の戦いは見てて普通に面白いんですけど、この頃にはすでに「ああこの映画は子どもにも見てもらいたいから無理やり冒険物語にしとるなあ。まあ大手のピクサーの映画だから商業主義に走るのはしゃあないか。」と僕の心はすっかり冷めきっていました。子どものラッセルのキャラクター描写がベタすぎて失敗したような気がしますね。こんな良い意味で純粋で悪い意味でバカなガキは現実には絶対にいませんし、見ててかなりうっとうしいです。彼とカールの心の交流には少しも感動しませんでしたから。まだバグとの心の交流を描いた方がマシだったんじゃないでしょうか。僕は彼が大好きです。他の犬は群れで行動しているのに、彼だけはいつも一匹で行動しています。他の犬達の彼への接し方から考えて、おそらく彼は犬軍団の落ちこぼれでみんなにバカにされ相手にされてないんでしょう。だから同じく孤独なカールじいさんをご主人様と慕うんだろうなあと思います。彼をもうちょっとクローズアップしていれば、僕はこの映画に満点を付けたかもしれません。

 あと、僕はこの映画は日本語吹替で観ましたが、やっぱりプロの声優は上手いですね。前作のサマーウォーズみたいに俳優の声優とは格段の差があります。

評価(★×10で満点):★★★★★★★★★

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