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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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余命いくばくもないふたりの男が、病院を抜け出し盗難車で海へと向かうロードムービー。残りわずかの人生を、ふたりは思いきり好きなことをして駆け抜ける。強盗、監禁、銃撃戦。犯罪を重ねて世間を騒がせながら、天国ではみんながその話をするという海を目指す。

マーチンとルディの間に流れるのは、友情、という押しつけがましい絆ではありません。出会いは、たまたま病室が同じだっただけのこと。しかしお互い死を宣告された身とあって、共感を憶えたふたり。病室で煙草を吸うようなマーチンと、一般的な良識を備えたルディ。街中で出会ったならばきっとすれ違うだけで終わったような正反対のふたりですが、それは死期を知った彼らにしかわからないシンクロだったのかもしれません。

死を前にしながら、悲愴感は皆無。スイートルームにはしゃぎ、チップをはずみ、むずかしい綴りのルームサービスを頼む。まるで玩具を与えられた子どものように、はじめての体験を満喫する。しかし突如として差し挟まれるマーチンの発作、その苦しみに、痛みをともなう現実を思い知らされます。

確かに悪いことをいっぱいするのだけれど、早く海へ着かせてあげたい気持ちにさせられるのは、ふたりが人間の持つ優しさを忘れていないから。自殺する勇気はなく死刑になりたいからと殺人を犯す者もいるこの世の中で、母を思い、友を思うこころをきちんと表現しているから。それもさりげない、ごく自然な描写として。

絶妙な笑いと涙のバランス。香る風と潮騒の音を感じるラストは秀逸でした。

日本でリメイクされたようですが、こちらは長瀬智也と福田麻由子。福田麻由子は少し気になりますが、日本人が日本でこれをすると、感覚的に難があるような気がします。やはりドイツという国民性をよく知らない国の、男クサイふたりだからいいのではないかと。

評価:★★★★☆

 

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