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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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昨日、なにげなく合わせたチャンネルで、ボクシングを放送していました。

「あー。そういえば『せやねん』で特集していたなあ」

ボクシングに詳しくなくても、ローカル局で早くから注目されていた井岡一翔の名前だけは知っています。

「お、観よ観よ」と、男性らしく格闘技にはそれなりに興味を持つツレ。

「野球もないし、まあいっか」と、なんとなく観始めてみたら。

これが、目の離せない息詰まる激闘。

 

ボクシングに触れた経験といえば『がんばれ元気』を読んだくらい。

大昔ゴールデンタイムに流れていたマイク・タイソンの試合は、「フーン、強いねんなあ」と思っただけ。

ツレが観る亀田戦も興味がなくて横目でチラチラしつつ「つまんない」という感想を抱く程度。

動きが速くてパンチが決まったのかどうかもわからないし、流血や腫れは観てて痛々しいし、パンチドランカーは怖いし、とにかくどうしてこんなスポーツをわざわざ選んでするのか、理解できないのです。

 

最初は作業しながらのながら観だった自分ですが、

ラウンドが進むにつれ、いつの間にか息を詰めて三分間を見守っていました。

会場はホームなだけあって、観客も井岡寄り、実況も井岡有利に進めていました。

八重樫という選手は名前すら知りませんでした。

それでも、なんの知識も興味もない、ただ観ているだけのシロートにも、実力伯仲の熱戦なのがわかります。

 

一本を取ることを目的とせずポイント稼ぎのスタイルに移行しつつある最近の柔道はつまらないと感じます。

ボクシングもそれと同じで、ポイントを稼ぎ判定勝ちをおさめればそれで良いのではなく、リングの外からすればやはりKO勝ち(ミニマム級ですからKO勝ちはないにしても、打ち合う試合)が観たいのです。

 

両瞼を腫らしても最後まで戦う姿。

リードしているにもかかわらず、ガードに入らず正面から挑む姿。

「まだ半分? もう引き分けでいいやん!」と、途中には観ているのもつらかったのですが、気がつけば12Rを終えていました。

涙が出そうでした。

井岡は八重樫の見えない右に回れば、もっと優位に立てたかもしれません。それをしなかった理由は本人にしか知りえませんが、その姿勢は正々堂々潔く映りました。視界不良の中ひたすら前に出て攻め続け、最後の力を振り絞り相手にダメージを与えた八重樫の姿にも、アスリート魂を感じました。勝者と敗者に分かれこそしましたが、両選手の健闘はどちらも同じぶんありったけの賛辞を送られるべきものでした。

 

武器も防具もなくただ殴りあうだけの純粋なスポーツに、派手なショーや演出はいらないと感じます。

リングの上でくり広げられる力と技と意地のぶつかり合い以上に、会場を沸かせ感動と興奮を呼び起こすものは存在しないのです。

 

少し悲しかったのが、辰吉・・・。ちょっと見ない間に、さま変わりしてしまいました。感動冷めやらぬ背に冷や水を浴びせられた気になりました。

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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