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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『それでも、生きてゆく』

毎週、なんとなく姿勢を正して、ティッシュをそばに置いての鑑賞となりました。

実際の事件を想起させる挑戦的なテーマ、独特な脚本もさることながら、演者のそれぞれが骨の髄まで役柄になりきってしまったような追い詰められた演技にはこちらの心まで深い闇に鎖されてしまうようでした。素晴らしいドラマ、と評してしまって良いものか。まだテレビにはこんな力があったのかと見直してしまいます。

役者は誰もが最高の演技をしていたと思いますが、中でも強い印象を与えたのが大竹しのぶでした。

愛する娘を喪った母。幾年も癒えない傷を背負って生きてきた苦しみ、哀しみ、そして侃さ。犯人を前にしてその歳月を吐き出す時の演技は想像を遥かに超えていました。心を目に、手に感じ取ることができない第三者は、その思いに共感して泣くことすら傲慢である、と、こちらの安易な介入を断固としてはねつける、母としての女性の、決して脆くはない強靭な精神を感じました。大きな壁を乗り越えて、少し柔らかくなった表情にも感銘を受けました。

文也役の風間俊介も難しい役どころでしたが、期待を裏切らない演技でした。背筋がゾッとするような陰影をたたえた両の瞳、洋貴と双葉の心からの言葉も通じない深い心の闇。視聴者が期待する「反省」「更生」がいかに安易で無責任な言葉なのかを感じさせられる静かなる熱演でした。

もちろん、主演である瑛太と満島ひかりあってこその作品でした。満島ひかりはともかく、瑛太にもこんな自然な演技ができたのだなあと。最初は少しぎくしゃくしていたように思うナチュラルを強調した脚本も、次第にふたりの屈折した心模様、思いのままに生きられないもどかしさがあぶりだされてくるようでした。一歩間違えば大失敗に終わるであろう難しい脚本を、よくぞ巧みに演じてくれたと思います。

どういう結末にするのだろう、と、終わりが近づくたびに気になっていました。事件の真相はあきらかにされるのか、救いはあるのだろうか、などなど。結局、文也の刑期はわからず、もし出所することがあったならその時はどのような心境で家に帰るのか、真岐は目覚めるのか、洋貴と双葉は再会できるのか、すべては未来に託されて描かれることはありませんでした。

人生に結論はない。それは最期の時に、それぞれが下せば良い。それまでは、生きてゆく。誰もが、時には泣く。時には笑う。そうして、進む。前へ、明日へ。それが、きっと希望なのだろう。

最良の最終回であったと、思います。

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