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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ボストン郊外の閑静な住宅街は、性犯罪で服役していた犯人が戻ってくるという話で持ちきり。

公園で噂話にふける他のママたちになじめない専業主婦のサラは、

同じく専業主夫のブラッドと、ふとしたことから関係を持ち、

情事に溺れていきます。

その一方で、元犯罪者のロニーは町じゅうから迫害を受けます。

狭い世界で生きる人間たちの平凡な日常は、やがて嵐のように変化していきます。

不倫がリアルかどうかは知りませんが、この作品のキャラクターにはリアルな手触りを感じます。

私の従姉が公園デビューを果たした時、先輩ママが彼女の子どもにだけお菓子をくれなくて、

「くっやしいー! いつか絶対もらったるねん!」と地団駄踏んでいましたが、

怖い世界だなあと思いました。私には従姉ほどのパワフルさはないような気がします。

でもそれは子どものためを思えばこその力なんですね。

お菓子を分けてくれないお母さんが悪かろうと、

仲間はずれにされて淋しい思いをするのは子どもなのだから。

サラにも、「絶対もらったる」という気概はありません。

夫と子どもがいて、昼下がりに公園でおやつを食べる。

そんな毎日のくり返しに違和感を憶えています。

自分が産んだ娘すら、彼女の世界では違和感なのです。

そんな折に出逢ったブラッド。

彼もまた、キャリアウーマンの妻に養われる司法試験浪人の生活にウンザリしていました。

心の穴を埋めるかのような疑似恋愛に陥るふたりですが、

生きていくべき世界から目をそらしていただけのこと。

本当に大切なものは何なのか、ふたりはやがて悟ります。

そして生きていくべき世界へと、帰っていきます。

自分の世界しか持たない子どもから、広い世界を感じることのできる大人になって。

さてそれだけなら、よくある昼ドラのようですが、

「チルドレン」はもうひとりいまして、それがロニーです。

彼は町じゅうに顔写真入りのビラを巻かれ、家にもいたずら書きをされます。

人間の嗜好は簡単には変わらないのでしょうか、性犯罪は再犯が多いと聞きます。

もし子どもがいたら、同じ町に住むのは絶対嫌。

「性犯罪者は全員去勢、それか一生密閉空間で強制労働させろ」という考えの持ち主です。

夜中に誰もいない公園の横に車を停めて自慰行為に耽るくらいならいいけれど、

子どもで賑わうプールに足ひれつけて潜られたら、もう偏見の眼差しは止まりません。

度を越す攻撃に、抑えきれない性衝動。悪循環に陥るロニーの唯一の味方は母親でした。

その母を失った時、ロニーもまた、大人としての生きる道を選びます。

ラストのそれぞれの決断は、少しリアル感に欠けているような気もしますが、

スッキリとしていて、作品のテーマが孕む重さを感じない終わり方でした。

ただ、サラとブラッドの方向性の違いがあまりにも顕著・・・。

やっぱり、「母は強し」なのでしょうか。

次の日から、サラも「絶対もらったる!」って言えるようになるんでしょうね。

ケイト・ウィンスレットの体当たり演技も、見もののひとつ。

ブラッドに「美人じゃないし、少年のよう」と感想を持たれるサラですが、

どこがやねん! とつっこんでしまいました。

あのド迫力バディは、役作りなのか否か・・・。

アカデミー賞に何度もノミネートされているような女優さんなのに、

あそこまで惜しげもなく脱いでしまうのはスゴイ女優魂だと思います。

ベッドシーンにはドキドキしちゃいます。

評価:★★★☆(3.5)

 

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

  この映画はケイト・ウィンスレットの裸が見たいという理由だけで見ました。ケイト・ウィンスレットは僕が世界一好きな女優ですからね。結果ラブシーンは僕の期待を裏切りませんでしたから、それだけでもう十分なんですが、映画の内容自体も良かったです。群像劇っぽいわりにはそれぞれの登場人物の絡みが中途半端だし、全編を通じてナレーションが流れたりとかダメな所もけっこうあるので「傑作」とまでは言えないんですが、出来とかは関係なしに僕はこの映画大好きですね。満点付けときます。

 この映画に出てくる人間は全員しょうもない人間です。しかし、そのしょうもなさがいいんです。実際の世の中の人間もこの映画の登場人物と同じようにみんなしょうもない奴ですし、この映画は人間の欠点だけでなく弱さも同時に描いているから、見てると人間に対するいとおしさも生まれてきます。「人間ってダメだけど、自分のダメなところとちゃんと向き合い、他人のダメなところと折り合って生きていかないといけないなあ。」と前向きな気持ちにさせてくれます。だから僕はこの映画の登場人物一人も嫌いにならなかったですから。みんな架空の人物とは割り切れないぐらい人間味が出ていました。人物描写が丁寧な映画だなあと思いましたね。

 しかし、ブラッド夫婦がサラ夫婦を食事に招いた時に、ブラッドの嫁がわざとフォークを落としてテーブルの下で二人の足がくっついてないか確認したり、その時にサラの青いペディキュアに目を止めたりするあたりは、本当に繊細な描写だなあと感心していたんですが、肝心の「どうしてブラッドの嫁は夫とサラの浮気に気づいたのか」がまったく分かりませんでした。僕はこういうところは鈍感ですね。さや氏の説明を聞いてやっと納得しましたが。プールでお互い異性として意識し合っているのにその気持ちを隠し、子供を交えながら親同士としてぬらっとした会話をしているのにはかなりのエロを感じたんですけどね。こういう感性は男性の僕はさや氏より優れています。

 演者も上手かったですね。サラ、ブラッド、ロニー、ラリー、ロニーの母、ブラッドの嫁と登場人物を思い返してみると、みんな雰囲気が出てましたからね。特に性犯罪者のロニーを演じた人の演技はさすがアカデミー賞にノミネートされただけあって神がかっています。初登場はプールのシーンですが、出てきて1秒で不気味さを感じました。動作一つ一つが本当に薄気味悪いですから。何を考えているのか分からない眼つきとあいまって、100%性犯罪者に見えます。この年のアカデミー賞は「リトル・ミス・サンシャイン」のアラン・アーキンが獲ったようです。他にノミネートされたのは「ブラッド・ダイアモンド」に出てた黒人の仲間、「ディパーテッド」のマーク・ウォールバーグ、「ドリームガールズ」のエディ・マーフィです。僕は「ドリームガールズ」以外はみんな見ていますが、確かに全員「好演」はしています。しかしロニーの人だけは「神」レベルです。僕はロニーの人は初めて見た役者だし、別にファンでもなく、完全な客観的評価なんですが、何で賞獲れなかったんでしょうかね。

 評価:★5/(★5で満点)

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