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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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冒頭から、デビッド・リンチワールド。

脈絡のないシーンが次々に展開し、やっと落ち着いたと思ったら、

主人公である女優が主演する映画の劇中劇がはじまります。

最初は、恋人役の共演俳優と不倫におちる主人公の心情と劇中劇がシンクロする、

『千年女優』のような世界なのかな、と想像していたのですが、

いやー、それ以上のシロモノでした。

冒頭の脈絡のなさはずっと持続しているし、

さらに別の世界が増えるし、

わけのわからない人物がずらずら出てきて、ずらずら話して、

やたらアップと「間」が多く、

3時間もあるし、

最後には疲れ切ってしまいました。

もちろん監督には明確なヴィジョンがあったのでしょう。

しかし全体を通せば抽象画。

それはそれで芸術だと認められるべきなのかもしれませんが、

私は頭が固いのでしょうかね、映画はせめて筋だけでもわかりやすくしてほしいんです。

主演女優の「不安顔」と、時折挿し挟まれるウサギの家族の不気味さ、

光の拡散の効果はとてもよかったです。

評価:★☆☆☆☆

 

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

 デヴィッド・リンチの作品といえば、「エレファント・マン」や「マルホランド・ドライブ」なんかはむちゃくちゃ面白かったですが、この映画や「ロスト・ハイウェイ」はまったく面白くなかったですね。同じ監督の映画なのにかなりまっぷたつに評価が分かれるんですよ。この違いというのは、ストーリーを僕が理解したかどうかに尽きるんですけどね。

 「デヴィッド・リンチの映画というのはストーリーを理解しようとしてはだめ。あれこれ考えるよりも、雰囲気を感じて楽しめばいいのだ。」という意見をよく聞きますが、僕はそうは思いません。たしかにこの人の映画は抽象的な表現が多いですが、ストーリーはあるにはあると思うんですよ。だから、結果は人によって違うとしても、考えて見て自分なりのストーリー解釈はするべきで、ただ雰囲気を感じるだけではこの人の映画の見方としてはちょっと違うなあと思いますね。そういうわけで僕も考えながら見たんですが、この映画についてはさっぱり意味がわかりませんでした。まあ、一人の女性をいろんな角度から見て、いろんな感覚で描いているということぐらいは分かりましたが。

 もちろん、「感じる」ということも重要ですよ。この人の映画は独特の不気味な世界観がありますから。しかしその点だけでいうと、この映画より「マルホランド・ドライブ」の方がずっと良かった。この人の映画を4つしか見てないのに偉そうなことを言いますが、「マルホランド・ドライブ」こそデヴィッド・リンチの最高傑作だと思います。あれだけの映画はデヴィッド・リンチでも二度と作れないと思います。 それぐらい素晴らしい映画でした。この映画以上に奇妙で薄気味悪いシーンが次々に提示され、謎もかなり多いんですが、何回見てもその不気味さが心地よいです。「インランド・エンパイア」でいいなと思ったのはうさぎのシーンぐらいですからね。

 あと、この映画はすべてデジタルビデオカメラで撮ったそうですが、僕は純粋に見づらいのでいやだったです。今後この撮影方法でいくんだったら、もうこの人の映画は見ないと思いますね。フィルムに戻ってくれるんだったらもう1、2本はたとえ面白くなくても見ると思いますけど。この人の映画は嫌いではないんで。しかしさや氏の方は★1を付けるぐらいですから、もうこの人の映画は見ないでしょうね。3時間もありますし彼女にとっては拷問に近かったでしょう。僕は「ロスト・ハイウェイ」でその拷問に慣れていたので大丈夫でしたが。しかし点数はさや氏と同じく★1です。

評価:★1/(★5で満点)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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