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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『時をかける少女』

♪と~きを~ か~け~る~しょおじょ~

の、原田知世版ではありません。

去年公開されたアニメの方です。

舞台は現代。主人公は真琴という女子高生。元気で、パワフルで、アクティブです。

いつもつるんでいるのは、ちょっとヤンキーぽい千昭と硬派の功介。

真夏の空き地で野球ばっかりしています。

ところで、いろんな創作モノで、こういう女ひとり&男ふたりの組み合わせを見ますが、

現実には存在するんでしょうか?

ましてやイイ男ふたりなら、そーとー反感買うでしょうね。私みたいなヤツに

でも真琴が憎めないのは、せっかく手に入れたタイムリープの能力を、

プリンやテストやおこづかいや夕ごはんの献立に使ってしまう単純さがあるからで、

しかもそのタイムリープの方法も、「そんなに頭打って、大丈夫?」なハードアクションです。

思いつきで好きなことに能力を使ってしまう真琴ですが、

実は回数に限りがありました。

絶対に使わなければいけないその局面で、窮地に陥った真琴を救ったのは、千昭。

かつて恋の告白をされ、その時は能力で逃げたものの、

本当に大切な人は誰だったのか、真琴は悟ります。

時間は待ってくれません。巻き戻せないからこそ、一瞬一瞬がかけがえないもの。

もう絶対にくり返せない青春のひと夏を、鮮やかな夏空と陽光で彩った、

自分も青春期に戻って全力で走り出したくなるような作品です。

ただ、物語の鍵となる千昭の声優がイマイチ・・・と思ったら、

『夜のピクニック』の主人公を演じていた俳優さんでした。

このアニメも、声優に若手の役者を起用していますが、理解できない傾向ですね。

そして、これは観終わってから知ったのですが、

実はこの作品、原田知世版(つまり原作)のひそかな続編だったのです。

それを知っていたら、二倍楽しめたかも。

評価:★★★★(4.5)

 

『ゆれる』

男兄弟、というのは、なんだか独特の響きがあります。

姉妹や兄妹(姉弟)にはない、近いような遠いような、奇妙な関係。

もちろん、私にはわかりません。

たぶん、女性には理解できないいものなんだろうな、と思います。

しかし、この監督は女性。

理解できないからこそ、客観的にズブリと斬り込み、えぐりとることができるのでしょう。

田舎で稼業を継ぎ、まじめに、コツコツと生きている兄・稔。

東京で写真家になり、自由に、バリバリと生きている弟・猛。

幼なじみの智恵子の転落死をきっかけに、兄弟の人生は狂いだします。

加害者として法廷に立つ稔、

兄を助けようと奔走する猛、

離れている間は、大丈夫でした。誰も吊り橋を渡ることはなかったから。

最初から不安定だったのです。でも、知らないふりをしていました。

歩み寄ってしまったがために、ふたりの絆はゆれてしまった。

この作品中において、いっさいの真実は明らかになりません。

真実さえも不確かなものにすぎず、

絶えずゆれ続けているのです。それが人の心なのでしょう。

主役ふたりの演技は圧倒的。美しい自然の映像美も、よけいに悲しみを増しました。

ただ、なぜ検事役に木村祐一を出してしまったのか?

そこだけ不自然で浮いていて、緊張感が欠けました。

評価:★★★★(4.7)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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