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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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最初に読んだときは序盤の勢いが削がれた気がして、どうもしっくりこなかった終盤ですが、改めて原作を一気に読んでみると、これはこれでそれなりに世界観を大切にしたラストだったようにも感じます。

しかし映画はどうかねー、と危惧していたのですが、案の定。

原作の若干もっちゃりした雰囲気をそのまま持ってこられたら、観ている分にはツライです。絶対ありえない冒頭の疑惑も蛇足の感。原作と違うラストというふれこみですから、ここで目を引かせようとしているのかもしれませんが。オリジナル結末という冒険は個人的には好きではないのですが、この映画に限れば、そこだけちょっと違った雰囲気が出ていて思ったより良かったです。神木隆之助の線の細い美少年ぷりも佐々木蔵之助と似かよった風貌もプラスになりました。

しかしあの壮大な原作を3本にまとめるのは、やはり無理だったということですね。キャストや世界観など、原作に対するオマージュは感じましたが、紙と映像では表現の得意分野がどうしても違ってくるし、『DEATH NOTE』のように思い切ってオリジナル展開に徹していれば、この第三部も満足できる作品になったのではないかと思われます。

それにしても、原作者の浦沢直樹は、同窓会で顔を憶えていない人がいて、この話を思いついたそうですが、どこをどうひねったらこんなストーリーが浮かぶのか、不思議でたまりません。

評価:★★★☆☆

 

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~ 

 やっと3部作すべて見終わりました。僕が映画評論家だったら、おそらくこの3部作はどれも10点満点で2点ぐらいしか付けないでしょう。人物描写がおろそかなので登場人物に感情移入できないし、次々と事件が起こってはいるのにテンポが冗長だから観ててかったるいし、壮大な原作を無理やり7時間程度に詰めているのでストーリーがかなり薄っぺらくなってしまっているし、演者も豪華なんですがただ出ているだけで見どころのある演技なんかは何もないし、何よりもこの映画を作った人たちがこの映画で結局何が言いたいのかがまったく伝わってこない商業主義の象徴のような作品です。

 ですが、僕はこの映画の原作はとても好きなので、自分の頭の中の漫画のイメージが映像になるだけでもそれなりに面白いです。「ともだち」も不気味で怖かったですし。第1作なんて完全に原作を映像に置き換えただけの映画なんですが、この部分は原作が一番面白いところなので、映画自体も一番面白かったです。ただ、今回観た第3作は原作がとてもつまらない部分なので、それを考えるとよく頑張ったんじゃないでしょうか。原作は本当に尻すぼみでしたからね。あの漫画は最初の方の面白さは僕が今まで読んだ漫画の中でダントツトップでしたから、あのまま短くスッと13巻ぐらいで終わってたらとんでもない鬼作になっていたと思いますよ。

 この映画のスタッフロールの後のラスト部分なんて、原作よりもずっと良かったです。「ともだち」がケンヂと友達になることに憧れていたので、ケンヂに固執しているということがスッと理解できましたから。まあ「原作とは異なるもうひとつの結末」という宣伝文句は風呂敷を広げ過ぎのような気もしますが。

 しかしその風呂敷も商業主義の観点からは効果的だと評価せざるをえないですね。この風呂敷のせいで観ててかったるいなと思いながらも、DVDで借りて150分一気に観ましたから。原作を読んでる人の中には第2作を観て、カンナ役の女優がどう見ても「最後の希望」には見えなくて第3作は観るの止めとこかと思った人も多いかと思いますが、やはり原作と違うラストと言われると気になって観てしまうでしょう。

  評価(★×10で満点):★★★★

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