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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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グラビアアイドル・如月ミキの自殺から1年後。

ファンサイトの管理人である「家元」は、追悼のオフ会を開くことを提案します。

当日、会場に集まったのは、

「オダ・ユージ」「スネーク」「安男」「いちご娘」の面々。

最初はクスリとさせられる場面が続きますが、

アイドルの死にまつわる《真実》を探ろうとするに至り、さまざまな《事実》が明らかに。

登場人物は最初から最後まで5人、ビルの1室から動きません。

いかにも舞台チックなシチュエーションですが、

観る者をまったく飽きさせない映画です。

5人は全員喪服を着ています。ビルの室内も、薄暗くて無彩色。

だからこそ、物語の鍵となる数少ない小道具や、

登場人物のキャラクターひとつひとつが生きてきます。

脚本はほぼテンポ良く、ラストまでうまくまとめています。

俳優陣も個性的。

「家元」小栗旬。『花より男子』はイマイチだったのですが、

陰のある花沢類よりも、こういう人のいい役が似合いますね。

「スネーク」小出恵介も軽いノリの若者を好演しています。

「安男」塚地武雅は器用な芸人ですね。笑いの持って行きかたはさすが。

「いちご娘」香川照之はさすがの存在感。登場時から怪しさ満載です。

他の出演者の演技レベルに難なく合わせられるのも、さすがの技量。

ちょっとがっかりなのが「オダ・ユージ」ユースケ・サンタマリア。

この人の演技を買っていたのですが、近頃下降気味?

最近はこの映画や『ホームドラマ!』のような、クールな役柄が多いようですが、

『お見合い結婚』などの普通の青年役がいちばん似合っていると思うのですが。

明らかになる《真実》よりも、この5人の絡み具合に惹きつけられて、

終わってしまうのが少し惜しい気持ちもありました。

ラストのダンスは必見。5人の弾けっぷりがさわやかです。

評価:★★★★☆

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

  面白かったですね。学ぶものも訴えるものもない、つまり見ても人生に何ら影響のない映画なんですが、「映画なんてしょせん暇つぶしだ」という観点で評価したら間違いなくトップクラスです。例えて言うとカードゲームのような映画なんですね。登場人物5人が次々に新しいカード(事実)を場に出すんですが、そのたびにアイドル死亡についての推理の筋道がガラリと変わって、登場人物の立ち位置もコロコロ変わるんです。よくここまでどんでん返しを延々と繰り返すなあと感心するし、見てて退屈しませんね。前半に出てくる膨大な伏線を上手いこと消化しつつストーリーが二転三転するから、強引さも感じさせないですし。
 
 僕は普段から言っているんですが、やっぱり映画で一番重要なのは脚本なんですよ。この映画なんかセットはしょぼいし演者も光る演技してないし「室内プラネタリウム」のところをあんなに長々と見せるあたり構成もイマイチなんですが、脚本が素晴らしいから総合的にはかなり良い映画になっています。この映画の脚本を書いた人は「ALLWAYS 三丁目の夕日」の脚本を書いた人ですね。あの映画もむちゃくちゃ良かったですし、この人が脚本を書いた映画はチェックするべきです。

 「室内プラネタリウム」の長さについてケチをつけましたが、もしあれが最後の大オチを強調するためにわざと長くしたんやと言うならば、監督も見事なんですけどね。ただ尺を伸ばすためとかだったらダメですけど。だって登場人物5人がみんなで作り上げた如月ミキ死亡の真相は、ありえないぐらいうっとうしいものですからね。最後の大オチがそれをまた根本から覆してくれるんですが、この大オチがあるから、思い込みで自分に都合のいいアイドルの虚像を作り上げそれに酔うファンの儚さ、虚しさ、切なさを感じるいいラストになるんです。ラスト付近で如月ミキがヘアヌード写真集にも前向きだったことも判明しますしね。まあこの映画の言うとおり、アイドルなんてしょせん虚像だと思いますよ。クールな僕は生まれてこのかたアイドルに興味を持ったことはまったくないですから。

 ちなみに如月ミキはラストで顔を見せるんですが、これはさや氏が見せない方がいいと批判してました。僕は見せた方がいいと思います。歌も芝居も出来ないしょうもないアイドルという設定なんですが、最後に容姿もイモっぽくてイマイチということが明らかになりますから。もしかするとこいつのファンは実は日本中で「家元」一人だけだったんじゃないかと思わせてくれてなかなか面白いです。

評価:★4/(★5で満点)

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