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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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昔のことを思い出したりしているうちに、西武ライオンズの松坂大輔が大リーグに行くことになりました。

もうめずらしくもなくなったけれど、アメリカンドリームです。

 

彼は、自分のために夢を追いかけていくのだけれど、

その背中を、たくさんの期待が見守っています。

 

松坂というと、忘れられないことがあります。

彼が高校3年の夏、言わずとしれた甲子園春夏連覇・松坂伝説を作り上げた年ですが、

私は東北旅行に出ていたため、野球中継をまったく観ていませんでした。

延長17回のことも、翌日になって知ったくらいです。

お稽古のため、私は友達と別れて、先に帰途につきました。

青春18きっぷによる普通列車の旅だったのですが(あの頃は若かった・・・)、

静岡あたりの売店で、退屈しのぎに野球の雑誌を買いました。

とっくに終わっていた夏の甲子園の特集号でした。表紙は、優勝を決めた瞬間の松坂投手です。

雑誌を渡しながら、売店のおっちゃんが突然言いました。

「この子もすっかり有名人になっちゃったねー」

「えっ、知り合いなんですか!?」

「いや、全然」

(なんやそれ!)

 

松坂と言われて思い浮かべるのは、愛嬌のある笑顔です。

ハンカチ王子のようなイケメンなら、あのおっちゃんも「この子」とは言わなかったでしょう。

彼が国民的スターになったのも、そのたぐいまれな実力はもちろんですが、

あの、なんとも人を和ませる野球バカな笑顔(注:誉めています)も、

その要素なのではないかなあ、と思います。

 

笑顔といえば、楽天に入団の決まっている駒大苫小牧高校・田中投手も印象的でした。

夏の決勝最後の打席、三振してひきあげる田中投手の小さな微笑に、胸が熱くなりました。

ポーカーフェイスで耐えてきた重圧から解き放たれ、やるべきことをやりつくした充足感に満ちていました。

この敗戦は終わりではない。新しい野球人生の始まりです。

そのスタートラインが、彼には見えていたのでしょう。

彼がプロでどんな選手になっていくのか、まだわからないけれど、

あのやさしい笑顔だけは、変わらず持ち続けていてほしいと思います。

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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