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クラッシュ
さすがアカデミー賞3部門受賞というべき作品です。
監督/ポール・ハギス
出演/サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン
(2004年・米)
他民族国家のアメリカ、ロサンゼルスに住む、刑事、自動車強盗、地方検事とその妻、TVディレクター、鍵屋とその娘、病院の受付嬢、雑貨屋の主人など、さまざまな人種、階層、職業の人々の人生の交差を描いた話です。
僕ははるか昔に「マグノリア」という映画を見ましたが、これと似たような感じの映画ですね。いろんな人が登場して、その人達がそれぞれ時間や空間を共有し合う小さなエピソード群によって構成されています。そして、一つのエピソードが、また違うエピソードに影響を及ぼします。終盤に空から何かが降ってくるというのも、「マグノリア」と同じですね。
あと、この映画は人種差別をテーマにしていて、黒人はけっこうたくさん登場していていろいろなドラマがあるのに、黄色人種に対する差別があまり描けていなかったのも、黄色人種の僕からすると納得いかないところです。数少ない黄色人種の雑貨屋のオッサンはこの映画の登場人物の中で一番わからんちんのムカつく奴ですしね。あとは車に轢かれる中国人とかですから。
文句を言うとこはそれだけです。さすがアカデミー賞を3部門受賞しているだけあって、素晴らしい映画ですね。一つ一つの小さなエピソードがどれも丁寧に作りこまれていて、なかなか考えさせられるものです。その中でも僕がとりわけ感動したのは、黒人の錠前屋とその娘の女の子の「透明マント」の話と、交通事故に遭って炎上する車の下敷きになった黒人女性とそれを助けようとする白人警官の話ですね。
「透明マント」の話は、ガラの悪い所に住んでいて、寝床で外から聞こえる銃声におびえて眠れない幼い娘に、オヤジが「おとうさんは妖精にもらった『透明マント』を着ているからピストルの弾もへっちゃらなんだよ。このマントをあげるから、安心して寝なさい。」という童話「裸の王様」のパクリのような話を娘に言い聞かせるんです。幼い娘は素直にその話を信じて安心して寝ます。その後時が経ってこのオヤジは娘のために安全な所に引っ越すんですが、彼を逆恨みするヤツに自分の家の前で実際にピストルで撃たれそうになるんです。それを間の悪いことに透明マントの存在を信じている娘が見ていて、飛び出してきてオヤジをかばって覆いかぶさり、その瞬間銃弾が発射される、といった話です。かなりびっくりするし、そのぶん後からすごく感動してしまう話です。
だから、この映画は全ての登場人物を性格が良い、悪いとか気が強い、弱いとかで割り切れる存在として描いていません。終盤でも、僕が差別意識を持っていない善人だとずっと思っていたヤツが、実は心の奥に差別する心を持っていたのか、ちょっとしたことでそれが表に出てしまい、とんでもないことをやらかしてしまいますし。いろんな側面がある人間というものをきちんと描いている映画だと思いますよ。
ロスのハイウェイで起きた交通事故をきっかけに、さまざまな人種、階層、職業の人々の人生が連鎖反応を起こすヒューマンドラマ。脚本に惚れ込んだサンドラ・ブロックや、ドン・チードル、マット・ディロンら豪華キャストが、運命に翻弄(ほんろう)される現代人の怒りや孤独や悲しみ、喜びや救いを見事に表現する。『ミリオンダラー・ベイビー』の製作と脚本でアカデミー賞にノミネートされたポール・ハギス監督による珠玉の名作。
後者の交通事故の話も緊迫感がありました。その交通事故が起こるまで、赤の他人のこの2人の間にいろいろあって、この警官にイヤな目にあわされたことのある黒人女性は素直に救いを求めないですし、白人警官の方も人種差別主義者だということがもう判明しているので、「コイツ、ほんまにちゃんと助けんのかな?」とこっちは思ってしまいます。白人警官を演じているマット・ディロンはかなり昔に「ワイルドシングス」という映画で一度だけ見たことがあるんですが、時が経って随分いい役者になりましたね。
この映画のタイトルは「クラッシュ」ですが、これはストーリーが事故で始まって事故で終わるからというだけでなく、人と人とがぶつかり合って分かり合うということを意味していると思います。この映画の登場人物たちはもめてばっかりですしね。しかし、この人種差別主義者の白人警官なんかを見ていると、相手とぶつかり合うことによって、自分がしたことの罪や相手の受けた心の傷の大きさに気づくんだなあと思いますね。
<クラッシュ 解説>