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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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魔法の国のお話です。

ファンタジーにはつきものの、「弱虫」が主人公ですが、

子どもではなく、18歳(には見えないが)の青年・トリスタン。

片想いの相手に「流れ星をプレゼントしよう」とムチャクチャな決意をするボンクラ。

越えてはならないとされている「壁」を越え、未知の世界に踏み込むトリスタン。

ところがその流れ星・イヴェイン、美女(には見えないが)に姿を変えている。

トリスタンはイヴェインを連れて故郷に帰ろうとしますが、

イヴェインを追う魔女やら王子やらがからんできて、ドタバタ劇が始まります。

ファンタジーとはいえ、案外ブラック。

魔女はもともと老女ですが、魔力を使うたび若さを失っていきます。

王座を狙う王子たちは、兄弟同士で殺し合います。

殺された相手は幽霊になりますが、全身火傷だったり顔が潰れていたり。

でも幽霊同士の会話がとぼけているので、ドロドロしていません。

驚いたのが、ロバート・デ・ニーロがこんなマイナーな映画に出ていたこと。

しかも(ピー)な趣味を持つ、変な船長役・・・。

それはそれで、とっても味があって良かったのですが。

ところどころ、ひと味違った楽しみを見せてくれるものの、

基本は王道ファンタジーです。

当初は、ヴィクトリアを振り向かせることしか考えていなかったトリスタンが、

デ・ニーロに仕込まれて立派な男として成長し、

いつの間にやらイヴェインと恋仲になってしまうあたりは、

ベタベタとしか言いようがないのですが、

これくらいベタな恋物語を楽しめるのも、ファンタジーならばこそですね。

イヴェインと気持ちを通じ合わせた翌朝、

トリスタンは「壁」に戻り、約束どおりヴィクトリアに「星」の髪を渡しに行きます。

ひとり目覚めたイヴェイン、彼がヴィクトリアのもとへ帰ったことを知り、

「真実の愛を見つけた」という伝言に真っ青になって、トリスタンを追うのですが・・・。

「真実の愛」がどこにあるのかは一目瞭然なわけですが、

恋に目覚めたばかりの不安でいっぱいな女の子に曖昧な言葉を残してどうすんだよ~、と呆れました。

まあ、今後の展開のためには、そういうひっぱりが必要だったのだろうとは思いますが、

本当にトリスタンがイヴェインを捨てて帰ったと考える人間がいたのはオドロキですね。

ラストまでは怒濤の展開(といっても予想どおりの大団円)。

どこか『天空の城ラピュタ』のような味わいもあり、

疲れた週末の夜に鑑賞するにはピッタリの映画でした。

評価:★★★★☆

 

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

 この映画はね、意外といいんですよ。平凡な若者が冒険を通じて成長し、最後は真実の愛を見つけるというファンタジーの王道ともいえるストーリーで、見たからといって人生に何の影響も及ぼさない映画なんですが、単純に面白かったですね。僕はファンタジー映画でも映像よりストーリーを重視するんですが、そのストーリーがファンタジー映画特有のムチャクチャな世界観に基づいているとはいえ、うまいことまとまっていたような気がします。逆に、映像を重視する人には、この映画は地味すぎてダメなんじゃないですかね。かんじんの魔法のシーンもパッとしないし。ちょっと「おーっ」と思うのは魔女が宿屋を作るシーンだけです。

 登場人物もみんな良かったですね。ウォールの壁を守る爺さんが出てきたときは、「おいおいこの映画大丈夫かよ。」と思いましたが、あとの人はみんな良かったです。主人公とヒロインは配役が良かったですね。主人公はもともとはダメ男という設定ですから、イケメンでないのは当然として、個性的な顔でもないこの俳優はいいですね。ヒロインの女優もそんなに可愛くないとこが良かった。ヒロインだけが美女だとしても、僕は男なので嫉妬の心が芽生えて主人公のことが嫌いになりますから。ただ、この映画のヒロインは流れ星なので、どうもいい気分になると光を発するようなのですが、この光を発するタイミングが分かりやすすぎて、ちょっとだけヒロインのことが可愛く見えてしまったことは反省ですね。

 亡霊王子達、海賊、魔女三姉妹などもみんなどこかボケていて面白かったです。主人公が最初に好きだった女も美人なんですがいかにも性格がキツそうで実に良かったです。しかしねえ、この女に主人公が「愛の証」を持っていくとこだけは納得できないんですよ。さや氏に言うと「人の気持ちがわからない荒んだ心の人間」扱いされましたが、僕は今でも主人公は一時的に星の女を捨てたと思っています。星の女はとりあえずセックスはしたのでもういいか、みたいな。この時点で星の女の方が好きで、キツい女の方は何とも思ってないんだとしたら、別にキツい女の所へいちいち行かないでしょう。好きでもない女との約束より、危険が迫っている星の女のそばにずっといてあげるのが普通でしょう。本当に意味がわからないですね。この映画一番のダメなとこです。

 まあしかし、このような大人が見ても普通に楽しめるファンタジー映画は、ありそうでないので、貴重な存在です。男だったら女を連れてカップルで見に行くのがベストでしょう。そして、前段の僕が考えたようなことは男だったら誰しも思うでしょうがそんなことは言わないで、「やっぱり最後には愛が勝つんだよ。どんな魔法よりも権力よりも輝いているのは、愛なんだよ。」とか横の女に言うてればかなり印象はアップすると思います。

評価:★4/(★5で満点)

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