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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『美しき凶器』

ある科学治療によって、すさまじい運動能力を持つことになった少女が、

彼女を育てた研究者を殺害した元スポーツ選手を追い、次々に殺害していくサスペンスです。

女の異常なまでの執念、被害者たちの罪と罰、暗い過去。

いろんな部分が、マジでコワイ。

現在も、ドーピングはスポーツ界の大きな問題となっています。

この話で語られる《方法》は、もちろん作者の創作なのでしょうけれども、

ある程度の科学的根拠に基づいているであろうだけに、非常におそろしいです。

こういう視点が好きです。

 

『怪しい人びと』

中期の短編集。どの作品も非常に出来がよいです。

『灯台にて』は、途中まで作者の実体験だという話をどこかで聞いたような気がしますが、

本当ならまさに「怪しい人」ですね。怖い怖い。

 

『ゲームの名は誘拐』

藤木直人&仲間由紀恵で映画化もされた作品です。

雰囲気は『仮面山荘殺人事件』に似ています。

ひょんなことから誘拐を企てるエリート青年と、じゃじゃ馬お嬢様。

ラストの二転三転は、目を瞠ってしまいます。

それにしても、作者は女性を描くのがよほど苦手と思われます。

ヒロインにまったく魅力がない!

主人公も初期に戻ったかのようなクールガイ。

話はすごくおもしろいですけど。

 

・・・つづく

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『秒速5センチメートル』

『ほしのこえ』の新海誠監督のアニメ作品です。

前作まではSF要素の強い世界での恋愛を描いていたのですが、

今回は思春期の純粋な想いを描いた映画となっています。

この「純粋な」というところがミソですね。

純粋な恋なんて『りぼん』で嫌というほど読んできました。

で、それが全部虚構だということはわかっているのですが、

恋に恋した思春期を持つ大人ならば、この貴樹と明里の恋模様に切なくなるはずです。

小学校を卒業すると同時に転校した明里に会うため、雪の中を走る電車に乗った貴樹。

もし時刻通りに明里に会えていたら、想いをしたためた手紙を渡せていたら、

ふたりの未来はきっと変わっていたに違いありません。

キスに言葉は要らないけれど、

言葉を必要としなかったためにいちばん伝えたかったことを伝えられず、

いつしか地図上の距離は心の距離へと変わります。

高校生になった貴樹に、恋をする少女。

進路に、恋に、サーフィンに悩む彼女が第二部の主人公ですが、

明里よりもよほど体温を感じるキャラクターです。

帰り道、いつも待ち伏せするくせに、彼と同じミルクコーヒーを買うことができません。

ついに告白することを決めた日は、

彼と自分が交わることのない場所にそれぞれ立っていることを知った日でした。

彼の背中を追いながらなにも言い出せないまま涙を流す花苗の心は、

忍ぶ恋のわびさびを解さない直情径行の人間には永遠にわからないでしょう。

誰とは言いませんが。

変わって第三部。山崎まさよしの曲にのせて、貴樹と明里の現在の姿が映し出されます。

幼い恋の呪縛から解き放たれずに不器用に生きる貴樹、

新しい人生をみずからの手で選び取っていく明里。

テーマ曲が『One more time,One more chance』なだけに、

この監督は貴樹目線なのだなあと感じました。

貴樹にも春の訪れを予感させるラストが欲しかったですね。

自然美あふれる映像は、とても素晴らしかったです。

評価:★★★☆☆

 

『しゃべれども しゃべれども』

古典落語を愛する噺家・三つ葉と、

落語を習うため彼のもとへ集まってきた奇妙な面々。

無愛想で口下手な五月、大阪育ちのおしゃべりな少年・優、解説のできない元プロ野球選手の湯河原。

不器用ながらなにかを伝えようと懸命になる「弟子」たちの姿に、

女にフラれ、師匠にけなされ、落ち込み悩んでいた三つ葉も、

いつしか自分の中でなにかを変えていきます。

落語に接した機会といえば、学生時代の芸術鑑賞会のほかには、

関西ローカルで放送していた『らくごのご』という番組の高校生大会。

笑福亭鶴瓶と桂ざこばが即興で三題噺を披露するもので、

鶴瓶がたいていささっとまとめるのに対し、しどろもどろになるざこばが見どころでしたが、

たまたま観に行ったその時はめずらしく鶴瓶が苦しんでいて、貴重な経験をしました。

あとは、大学の邦楽部時代、同じ伝統系サークルということもあって、

落語研究会と仲良くさせていただいていたのですが、

向こうは定演はもちろん、内輪の部内発表会まで聴きに来てくれるにもかかわらず、

こちらはさっぱり出向いていかないので、よく先輩に怒られました。

つまり、そんなに落語に興味がないのですね。

でも、この映画内で演じた師匠役の伊東四郎は、落語を知らないながらもすごいなあと思いました。

講演会での話し方まで、真打という感じが出ていました。

一方、二つ目役の国分太一。

拙いしゃべりにお客が途中で帰ろうとも頑なに古典にこだわり続け、言いたいことを言って相手を怒らせる。

人の良さそうな太一くんには向いていない気がしましたが、

着流し姿は意外に似合っていましたね。

ラストを飾る『火焔太鼓』は見事な一席でした。

落語は「間」が命といいます。

コントやバラエティをする現代のお笑い芸人も、落語を聴いて勉強するといいます。

それ自体はポピュラーなものではなく、かたちも変わり続けているのに、

いろんな世界でちゃんと生き続けている芸能なのですね。

おしゃべりも生きかたも不器用な4人が、落語を語ることでそれぞれの世界を広げていく。

しゃべれどもしゃべれども、相手に届かないもどかしさ。

落語でも、会話でも、コミュニケーションの基本は同じ。

本当に伝えたいことは、どんなに不器用でも真剣であればよいのです。

五月の最後の笑顔は、とてもかわいかったです。

評価:★★★☆☆

文化的休日二日目。

 

「はっ! 今年は正倉院展に行っていない・・・」

と気づいたはいいものの、期間は月曜まで。

行くとしたら今日しかないですが、土曜ですから混雑は目に見えています。

「よし、開館前に行こう!」と、地元民の特権を行かして自転車を走らせたものの・・・。

 

到着は8時40分。

すでに長蛇の列でした。

 

開館時間を早めたのか、案外すんなり入れましたが、

中はわらわら、がやがや、ぎゅうぎゅう。

人の頭しか見えませんがな。

 

それでも目玉の展示品はしっかり鑑賞しました。

気の遠くなるような年月を経ても目にもあやな美宝の数々。

大仏開眼というイベントが、どれほど国家の大事であったかがわかります。

おもしろいのが写経。

字というものは人の性格が出ますね。

もちろん、とても整った美しい字なのですが、中には筆使いの豪快なものがあって、

ごっつい体格のお坊さんなのだろうかと想像してしまいました。

 

疲れ切って出口を抜けたところには、いくつかのテントが。

《鶴屋吉信》の和菓子、《植村牧場》のアイス、《ホテル葉風泰夢》のケーキセット・・・。

ちょっと、このタイミングずるくありませんか。

どうしてもそちらに向こうとする足をむりやりひきずり、興福寺へ。

秘仏と八部衆&阿修羅像の公開です。

教科書で見ていた阿修羅像を生で拝見するのははじめてです。

美しいお顔とすらりとした手足に、清冽な空気を感じました。

個性豊かな八部衆、仏典にもとづいたそれぞれの装飾もまたおもしろい。

彫刻には魂が宿るともいいますが、今にも動き出しそうです。

 

しかし、どこへ行っても人が多いのには困りもの。

今年も母校の定演に行ってきました。

仕事も休みだったので、お昼に西宮で友人と待ち合わせ。

目当ては淡路島バーガーのお店です。

ご当地ものでは佐世保が有名ですが、こちらは淡路島産の野菜を使用しています。

淡路島といえば玉ねぎ。柔らかくて甘くて美味でした。

しかしでかい!

レギュラーでこのサイズですから、ラージだとどうなるんでしょう。

そしてバックは懐かしの瓶コーラ。

 

お腹を満たしたあとは、京都に移動して会場へ。

古典あり、現代邦楽あり、部長挨拶ではなぜか尺八本曲の披露ありと盛りだくさんでした。

そしてレベルの高さもあいかわらずです。

55回目のラストを飾る大合奏『『祝哥』は、私が一回生の時に演奏した曲。

45回記念でした。つまりあれから10年

あの時尺八パートは全員で4人でしたが、今年は10人! 素晴らしい!

大所帯でなによりです。

「そうそう、ここで急いで楽譜のページをめくらないといけなかったんだわ」とか、

見ていて当時を思い出しました。

この曲のソロは鬼のように難しく、四回生の先輩が苦しんでいました。

「○○さーん(私)、代わってよー」「ななな何言ってるんですか!」というやりとりも懐かしい思い出ですが、

本番で見事な演奏を披露した先輩に、

「すごーい私も四回生になったらあんなふうになれるんだー」と夢想した私は愚か者でした。

自分が上回生の時に節目の年が来なくて本当によかったと思いましたね。

今回ソロは四回どころか三回生が分担していましたが、皆のけぞるほど上手でした。

思わず口ずさみそうになる未だに楽譜を憶えている自分にも驚き。

 

平日ともあって見知った顔は少なかったですが、

複数人に「60回記念はぜひ一緒に♪」と言われ、「あはは~」と笑ってごまかし、

「また来年」と挨拶を交わして、まるで年に一度の同窓会のような様相。

同期と駅ビルでごはんを食べて近況報告しあい、文化的秋の一日が終わりました。

バタフライ・エフェクト

人間ドラマとして主人公の成長をきちんと描いています。

 

r167458307L.jpg ★★★★★★★★★☆ 

監督/エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー

出演/アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート、
     ウィリアム・リー・スコット

(2004年・米)

 一時的なブラックアウトにたびたび陥る主人公のエヴァンは、ある日、自分のつけている日記を読み上げることで、記憶が抜け落ちているその時に舞い戻り、過去を変えることができるという力に気づきます。彼はその力で、悲惨な人生を送りあげくに自殺した幼なじみのケイリーを救おうとします。

 この映画は文句なしに面白いです。大きな賞レースに参加したわけでもないし、キネマ旬報の評価も低いですけど。あまり作品としての重みを感じさせない映画だからでしょうね。これはこれで脚本もかなり丁寧に作りこまれていると思いますし、中途半端な出来で重苦しいテーマの史実物やドキュメンタリーを見るよりはこういう娯楽作を見た方がよっぽど心にも身体にもいいと思うんですけどね。

 僕は元々タイムスリップやブラックアウトを題材にした映画が好きですし、「もしあの時違う決断をしていたら、どんな人生になっていただろう?あの時に戻って人生をやり直したいなあ。」という思いも人より強い、こういう映画を見るのにまさにうってつけの人材です。だからかなり期待して見たんですが、期待を裏切られなくてよかったです。

 ちょっと前に見た「ドニー・ダーコ」も同じようなタイムスリップ物でしたが、あっちは難解すぎて僕の頭ではついていけませんでした。この映画は面倒な理屈抜きに人間ドラマとして充分楽しめます。主人公が時間軸を行ったり来たりするんですが、決して構成は難解ではなくストーリーを追うのに苦労しません。そしてストーリーも最初から最後までスリリングな展開で見てて飽きないです。

 そして何よりもこの映画の最も素晴らしいのは主人公の最後の決断ですね。主人公は何回も過去に行って未来を変えるために頑張るんですが、何回やっても上手くいかなくて泥沼状態になり、彼自身と彼の大事に思っている人達がみんな幸せになる未来なんて存在しないことを知ります。そして彼はある決断をするんです。この決断がこれ以上ないぐらい悲しくて切ないんですが、達成感も伴う決断なんです。僕が先ほどこの映画を「人間ドラマ」として面白いと言ったのは、そういうところからです。主人公の成長をきちんと描いていると思いますよ。

 それにこの映画の大きなテーマの1つは初恋ですしね。初恋ほどほろ苦いものはないです。だから主人公にも自然に感情移入できます。

 しかし、ケチをつけるところがないわけではないです。まず、DVDに入っている2つの別エンディングです。前に別の映画の感想で言いましたが映画を1つの作品として捉えるにあたってこういう特典は非常にうっとうしいです。おまけにこの2つのエンディングの出来がとんでもなく悪いですからね。こんなしょうもないエンディングはずっと封印しとけと言いたいです。

 あと、主人公がたくさん生み出したパラレルワールドはどうなったんだという疑問が残ります。僕がリスペクトする藤子・F・不二雄先生の作品「のび太の魔界大冒険」では、魔法に憧れるのび太がもしもボックスという道具で魔法の使える世界を生み出してしまうんですが、その世界は魔王は出るわ魔物は出るわのとんでもない世界で、おまけにもしもボックスはママが粗大ゴミに出してしまい元の世界にも戻れないという窮地に立たされます。そんなのび太たちの所にドラミちゃんが助けにきて、もしもボックスを出し、さあ元の世界に戻れる、万事解決かな、と思わせます。しかしドラミちゃんの「魔法世界は魔法世界でパラレルワールドとなり元の世界とは別々に事が進む。」という説明を聞いたのび太たちは、「魔法世界の人々は魔物の脅威にさらされ続ける。それでは真の解決にならない。」という思いから再び魔法世界に向かうのです。

 どちらの作品の主人公の行動がより納得できるかは言うまでもないと思います。まあ、この映画がダメというわけではないんですけどね。何回も過去に戻って未来を変える行為なんて倫理的に良くないというのはこの映画の主人公も分かっていることだと思いますし。「のび太の魔界大冒険」よりは、ちょっと胸にもやもやが残るかなというぐらいです。点数は★9とします。それも限りなく満点に近い★9です。


 




<バタフライ・エフェクト 解説>

 過去に戻って現在、未来の出来事を変えることができる青年を描いたSFスリラー。『ジャスト・マリッジ』のアシュトン・カッチャー主演作。共演は『ラットレース』のエイミー・スマート。ノンストップで繰り広げられるストーリー展開と驚愕のラストは必見。
 幼い頃、ケイリー(エイミー・スマート)のもとを去るとき、エヴァン(アシュトン・カッチャー)は、「君を迎えに来る」と約束した。だが時は流れ、ケイリーとエヴァンは全く別の道を歩んでいた。
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