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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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NHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』のキャストが発表されました。

製作発表から早や4年。

脚本家の自殺やら会社の不祥事やらで、

放映どころか何の進展も聞かれなかったこのドラマですが、

やっと動き出した模様です。

 

司馬遼太郎は大好きですが、

中でもこの作品は、3回読みました。

好きという感情を通り越して、これを書き抜いた司馬氏に畏敬の念を禁じえません。

幕末はわかりにくいと書きましたが、明治はもっとわかりにくい時代です。

日清・日露の両戦争は、

世界から取り残され、必死で近代化の波に追いつこうとしていた日本が、

国家のアイデンティティを確立させるための歴史的ターニングポイントともいえるでしょう。

司馬氏は、生前この作品のドラマ化は頑なに拒否していたそうです。

ドラマは人の心に訴えやすいぶん、安直でもあります。

戦争というナイーブであやういテーマを、

従軍経験があり、小説の中でも反戦を唱える司馬氏は、

結果的に言えば、自身とその祖国を戦争の惨禍に巻き込むこととなってしまった《日露戦争の勝利》を、

安易に扱ってほしくなかったのだろうと思います。

今回のドラマ化は、NHKの熱意に遺族が折れたということだそうですが、

NHKはあの不朽の名作『大地の子』も作れた局なのですから、

故人の遺志を汚さぬような良質なドラマにしてほしいと、

いち司馬ファンの私は切に願うわけです。

 

さて、キャスト。

個人的に、いろいろ想像してはいたのですが、

秋山好古は絶対に阿部寛だと思っていました。

彫りが深くて、外国人にも見劣りしなかったという美丈夫の男ですから、

阿部ちゃんはぴったり。

正岡子規の香川照之も、ナイスな人選ですね。

人一倍情熱家で、でもちょっと屈折している青年、

香川照之なら、きっと司馬氏の作り出した子規像に劣らぬ役作りをしてくれるでしょう。

小説内にはほとんど女性が出てこないので、

ドラマ化したらきっと男クサイものになるんだろうなと考えていました。

そこを、子規の妹に菅野美穂ということですから、きっと子規の巻は柔らかい雰囲気になるのでしょうね。

秋山真之とのカラミもあったりして。

その真之が、本木雅弘とな。

「違うでしょ!?」とツッコんでしまいましたよ。

真之は良く言えば奇才、悪く言えば変態な男です。モックンじゃスマートすぎるよ!

『大地の子』を製作した時、原作者の山崎豊子氏は、

主人公の陸一心に本木雅弘を推していたそうです。

ですが、選ばれたのはまったく無名の劇団俳優・上川隆也。結果的には大当たり。

モックンだったら、もしかしたら視聴率は伸びなかったかもしれませんしね。

モックンにはがんばって、崩れに崩れてほしいです。

うーん、どうなるんだろう。

 

放送はまだまだまだ先。

しかも3年に分けて、とのことですから・・・話忘れそう・・・。

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