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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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直木賞&山本周五郎賞W受賞という宣伝文句と、

ノスタルジックな内容に惹かれて、買ってみました。

 

題材は《マタギ》。

当然ながら、自分とは縁のない世界です。

東北地方も一度しか行っていませんし、

それも観光地ですから、奥深い山の自然を体感したこともありません。

 

本を読むことは、その世界にシンクロすることであり、

この小説のページを繰っている間も、

いつしか雪を踏み、風を聴き、獣の息遣いを感じている自分がいました。

 

もう亡くなってしまいましたが、《姫神》というアーティストがいました。

縄文語をうたった『神々の詩』で人気を博しましたが、

初期には東北地方を題材にした音楽を多数作っていました。

凍えそうなのに、あたたかい。

見たことないのに、なつかしい。

瞼の裏に浮かんでくる自然に囲まれた風景とともに、

頭の中では常にそのメロディーが流れていました。

 

殺すこと、死ぬこと、生かすこと、生きること、

マタギの世界は、生と死という、

人間にとって切っても切り離せない命題と背中あわせです。

 

生きているものはいずれ死を迎える。

どうして死ぬために生まれてくるのだろう。

もしかしたら死ぬために生きているのかもしれない。

ならばいつか訪れる死を少しでも意味あるものにしたい。

ほんの少しでも意味ある生をはぐくみ意味ある死を迎えたい。

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