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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~ 

 簡単に言うと薬物依存でリハビリ施設を転々としている問題児の妹キムが、優等生の姉レイチェルの結婚式(この結婚式は家で行う)の2日前に一時退院して家に帰ってくる話です。ストーリーに光るものがあるわけでもなく、特に感動したわけでもないんですが、いい映画だと思います。いい映画なのにそんなに評価が高くないのは、おそらく結婚式のシーンの尺が非常に長いからでしょう。この映画は結婚式までは家族間に不穏な空気が漂っていて面白いですが、結婚式本番は直前に姉妹が唐突に仲直りして普通にうまくいくのでまったく面白くないうえに、尺まで長いですからね。僕はDVDのタイムバーを何回も確認しながらイライラして見てました。どうしてストーリー上特に盛り上がりのないここを長くしたのかはよく分かりませんが、この映画の非常に大きなマイナスだと思いますね。

 この映画の実質的な主人公のキムは、空気はちゃんと読めているのに、気性の激しさと建前が嫌いなところから、あえて空気の読めない行動をしてしまう人間です。本質的に悪い人間ではありません。ヤク中だった自分の運転により弟を死なせたことをずっと気にしています。死んだ弟を神に例えて、いつも神に許しを乞うています。そして結婚式前にどうして弟のお守りを自分に任せたのかと母親に感情をぶつけるのですが、母親はおそらく本当は自分が悪いとわかっているからか動揺してキムを殴ります。この母親はちなみに今は離婚していて家族とは離れて別の男と暮らしているんですが、その理由も何となくわかりました。それまで映画を観ていた感じではどうもキムは弟だけでなく結果的に家族から離れた母親のことも気にかけていたようで、どうなることやらと思ったのですが、何か殴り合ってふっ切れた感じで姉とも和解し、結婚式も普通にこなし、弟の写真を持ってまた施設に戻ります。このキムと母、弟とのそれぞれの関係の描き方はなかなか良かったのに、何度も言いますがつくづく結婚式のシーンの尺の長さが悔まれます。

 キムを演じたアン・ハサウェイがアカデミー主演女優賞にノミネートされたことが話題になってましたが、そこまで上手かったですかね?まあ良かったは良かったですし、「プラダを着た悪魔」の時の演技よりは上手くなったと思いますが、僕は別れた母親を演じた人の方が上手だったと思います。まあこの人はババアなので、キャリアの差があるので同じ土俵では比べられませんが。

 また、この映画は全編通じて結婚式がストーリー進行の中心なんですが、冠婚葬祭の身内同士のうっとうしい雰囲気と直前までそこになじめないキムの居心地の悪さが非常によく伝わってきてその点は良かったですね。冠婚葬祭嫌いの僕はキムの様子を見てるだけでしんどかったですから。僕はこういう結婚式をする家ではとうてい上手く生きていけそうにありません。たぶん結婚式も出ないと思います。その点キムは僕よりもずっと大人ですね。 

  評価(★×10で満点):★★★★★★

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